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Vol.9 中根 靖さん

インタビューに笑顔で答える中根さん
インタビューに笑顔で答える中根さん

中根靖さんが小諸市に移住してきたのは7年前のことです。もともと埼玉県の高校で数学教師をしていました。40代の頃から地方への移住を思い描き、50歳を過ぎたときに都会でのキャリアに終止符を打ち、第2の人生を歩むことを決断。自分にとっての理想の人生を追い求め、行動に移します。

軽井沢とその周辺地域には夫婦で以前からよく訪れて、自然が織りなすこのエリア独特の景観を実感していたため、東信地区に絞って終の棲家を探しました。移住後も3年間は、新幹線で埼玉の高校へ通勤しましたが、2015年に千曲川ワインアカデミーに入学しワイングロワーとして本格的に歩み始めます。この生活を始めたのは、玉村豊男さんの著書の影響も大きいそうです。

アカデミー入学とほぼ同時に、小諸市で念願の畑を借ります。他のワイングロワーと同じように、開墾には非常に苦労したとのことですが、今ではキレイに整った、美しいヴィンヤードを構えています。

小諸市菱平のヴィンヤードから浅間連山を望む
小諸市菱平のヴィンヤードから浅間連山を望む

ヴィンヤード名は「Mille・Beauté」(ミリ・ボーテと発音します)。Milleは「たくさん」という意味で、そこから連想して千曲川の「千」も表現しています。Beautéはフランス語で「美しい」。すなわち「千曲川流域に位置する、とても美しい場所」にしたいという中根さんの想いが込められているのです。

長野県の入り口に位置する軽井沢から小諸市高峰辺りまでは、キャベツやレタスなど高原野菜の栽培が盛んですが、ブドウやリンゴなどの果樹栽培には適していません。しかしちょうど中根さんの畑あたりから景色がガラリと変わり、色とりどりの果樹園が増え始めます。同じ東信地区でも、気候や土壌によって最適な作物が大きく変わってくるのです。Mille・Beautéは千曲川ワインバレーのほぼ東端に位置するため、軽井沢経由で長野を訪れた人に対しては、この地からワインバレーが始まる印象を与えることでしょう。

教師からワイングロワーへ
教師からワイングロワーへ

ヴィンヤードは小さな丘へと続く半島のような高台にあります。北に浅間連山、南に八ヶ岳、西に美ヶ原から北アルプス、そして空気の澄んだ日には遠く富士山も望めます。中根さんが惚れ込んだ景観であり、この恵まれた景色と一体化して味わえる「美しいワインづくり」を目指しています。

田舎に移住して農業を始めることは、多くの都会の人にとって、憧れの人生に映ることでしょう。しかしほとんどの場合、仕事が180度変わってしまうため、思い切った行動を起こせる人は多くありません。一方で、中根さんは「教師と農業には共通点がある。」と言います。彼にとって過去と現在の仕事は分断されたものではなく、一連の流れになっているのです。

高校教師時代
高校教師時代

高校では1クラス40名の生徒を受け持っていた中根さん。
「クラスでは生徒の様子を一瞬で見分けることが求められます。落ち込んでいる子がいたら、フォローしてあげないといけません。瞬時に観察することが、職業柄、癖になっているんです。」

「観察する」ことは、ブドウ栽培にも当てはまります。毎日畑の状態を見て回り、元気のない樹や房があれば、すぐに対処しなければなりません。お世話をする対象が、人と農作物という違いはありますが、中根さんは「瞬時に見分ける」という共通点を見いだして、その特技を今でも生かしています。ちなみに「高校生の扱いのほうが難しいかも。」と笑います。

今秋収穫するブドウで、ファーストヴィンテージを醸す予定
今秋収穫するブドウで、
ファーストヴィンテージを醸す予定

現在栽培している品種はメルロー、シャルドネ、カベルネフランで、来年夏にはファーストヴィンテージがリリースされる予定です。重すぎずブドウの味がしっかりして、静かな余韻を楽しめる「美しいワイン」をつくっていきます。作り手のことをより身近に知ってもらうため、近々、販売所や農業ボランティア休憩所に使える多目的施設を設ける予定です。

「移住してワイングロワーになったライフスタイルを、ワインを通して表現していきたい。」中根さんはにこやかに語りました。

千曲川ワインアカデミー1期生。もともと埼玉県で高校の数学教師をしていたが53歳で早期退職。小諸市にヴィンヤード「Mille・Beauté」を構える。栽培品種はメルロー、シャルドネ、カベルネフラン。2019年にはファーストヴィンテージがリリースされる予定。

(取材/文 アグリマーケティング 田中 良介)

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