誰にでも人生の転機は訪れるものだと思います。それが40歳のときなのか、50歳なのか、もっと年配になってからなのかは人それぞれ。自然な流れで転機を迎える人もいれば、自分の意志で作り出す人もいます。
伊澤貴久さんの転機は50歳のときでした。東京出身で、大手一流企業で働いていた元金融マン。伊澤さんは強い意思をもって長野県立科町に移住し、ワインづくりを始めました。職業も住む場所もこれだけ劇的に変えてしまうのは、決してたやすいことではありません。自らを慎重なタイプと表現する伊澤さんが、どのようにこのような転機を作り出すに至ったのか、聞かせていただきました。
若いころから、漠然と地方での果樹栽培を思い描いていたと言います。また40代のときにリーマンショックなど金融界にとって厳しい時期を経験し、50歳からは地に足をつけたことをしたいと考えるようになりました。金融マンとして最後に取り組んだのは6次産業化ファンドの仕事で、ワイナリーへの投資案件をいくつか担当しました。実は、アルカンヴィーニュの立ち上げに際して、玉村豊男さんが事業計画の相談を持ち掛けたのが6次産業化ファンドにいた伊澤さんでした。これらの投資案件を手掛けたことが、本来全く異なる職種である金融とワインづくりを、伊澤さんのなかで結び付けたのでした。そしてここからヴィジョンが加速し始めます。