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Vol.7 伊澤 貴久さん

6次産業化ファンドで営業部長をやっていた伊澤さん(写真左)
6次産業化ファンドで
営業部長をやっていた伊澤さん(写真左)

誰にでも人生の転機は訪れるものだと思います。それが40歳のときなのか、50歳なのか、もっと年配になってからなのかは人それぞれ。自然な流れで転機を迎える人もいれば、自分の意志で作り出す人もいます。

伊澤貴久さんの転機は50歳のときでした。東京出身で、大手一流企業で働いていた元金融マン。伊澤さんは強い意思をもって長野県立科町に移住し、ワインづくりを始めました。職業も住む場所もこれだけ劇的に変えてしまうのは、決してたやすいことではありません。自らを慎重なタイプと表現する伊澤さんが、どのようにこのような転機を作り出すに至ったのか、聞かせていただきました。

若いころから、漠然と地方での果樹栽培を思い描いていたと言います。また40代のときにリーマンショックなど金融界にとって厳しい時期を経験し、50歳からは地に足をつけたことをしたいと考えるようになりました。金融マンとして最後に取り組んだのは6次産業化ファンドの仕事で、ワイナリーへの投資案件をいくつか担当しました。実は、アルカンヴィーニュの立ち上げに際して、玉村豊男さんが事業計画の相談を持ち掛けたのが6次産業化ファンドにいた伊澤さんでした。これらの投資案件を手掛けたことが、本来全く異なる職種である金融とワインづくりを、伊澤さんのなかで結び付けたのでした。そしてここからヴィジョンが加速し始めます。

野村証券時代の同僚、取引先の方が収穫時に来訪
野村証券時代の同僚、
取引先の方が収穫時に来訪

伊澤さんは、案件について知識を増やすため全国のワイナリーを巡ります。知れば知るほど、自身の進むべき道が見えてきたと言います。

ワインの道を歩もうと思ったのには、もう一つの理由があります。ワインの魅力は、なんと言っても人と人を結びつける力があること。移住後も、昔の仲間との繋がりを大切にしたいと考えていた伊澤さん。ブドウを栽培してワインを造って、そこに昔の仲間が遊びに来てくれて・・・、という具体的なイメージが沸々と湧いてきたのです。

立科町が移住候補地の一つでした。かつて奥様の実家の別荘があったため、何度も訪れたことがあり、その景観や恵まれた食などに魅せられていたからです。そんな中、立科町のホームページを見ていて、ある情報が目に留まりました。

「ワイン葡萄の試験栽培。担い手募集 40歳まで。」

耕作放棄地を開墾
耕作放棄地を開墾

当時の伊澤さんは、制限年齢より10歳も上。多くの人は、ここであきらめることでしょう。しかし伊澤さんはその募集要項を無視して、立科町に問い合わせ、面接にこぎ着けます。熱意に圧倒された立科町は、伊澤さんを担い手にすることを決めます。晴れて、50歳の挑戦が始まったのです。

2015年には千曲川ワインアカデミー(アルカンヴィーニュ)で学びます。そうです、伊澤さんが立ち上げにかかわったアカデミーです!

奥様には「いずれは金融業界を離れて、地方で農業がしたい」という夢を、何年も前から誠意伝えていたため、移住に対して反対はなかったと言います。また人をつなげるワインの魅力、そして作り手となる意義にも理解を示してくれました。奥様自身は、現在の仕事と子育ての関係で東京在住ですが、月に何度かは立科を訪れて手伝っています。

ソービニヨンブランの収穫作業
ソービニヨンブランの収穫作業

2017年には、ファーストヴィンテージ(品種:ソービニヨンブラン)をリリース。このヴィンテージにはフランス語で「子供」という意味の「アンファン」と名付けます。若木からとれたぶどうで作ったワイン、不安も入り混じった「ここからスタート」というニュアンスです。地元立科のホテルに売り込みに行ってみたところ、予想以上の好反応が。その道のプロに認めてもらえたことが、駆け出しの作り手にとって大きな自信につながったと言います。

ファーストヴィンテージ300本はたった数日で完売。昨年、残念ながら手に入れられなかった人も多かったのではないでしょうか。伊澤さんは徐々に本数を増やし、それに伴い販路も広げていきたいと語ります。今年(2018年)に仕上がってくるのは、白はソービニヨンブランとシャルドネ。また赤は、メルローとカベルネソービニヨンをブレンドしたリュージュを発売する予定です。全部で2000本ほどになる見込みです。

昨年のファーストヴィンテージのお披露目会にて
昨年のファーストヴィンテージのお披露目会にて

将来的には、いま住んでいる古民家でワインを提供する場にする構想もあり、また飼っているヤギを増やしてシェーブルチーズを作ってみたいと語ります。ワイナリー建設も、少しずつ計画を具体化していきます。

50歳で自ら転機を作り出した伊澤さんは、現在55歳。食材にも恵まれた立科町で、地域に根差したワインづくりに、さらに熱が入っていくことでしょう。

50歳の時に金融マンからワイングロワーへ転身。千曲川ワインアカデミー1期生。ヴィンヤード名は「いざわの畑」。千曲川左岸の立科町に位置する。

(取材/文 アグリマーケティング 田中 良介)

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