生産者ストーリー

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Vol.4 富岡 隼人さん

明治31年創業の中棚荘
明治31年創業の中棚荘

今年立ち上がるGIO HILLSワイナリー。その若き醸造責任者は中棚荘の富岡隼人さんです。中棚荘は、小諸市に位置する老舗旅館で、島崎藤村ゆかりの宿として知られています。

GIO HILLS(ジオヒルズと読みます)というと、皆さんはどのようなイメージを抱くでしょうか?GIOには大地という意味があります。しかし実はもう一つの意味合いがあります。ベトナム語で「風」です。

「小諸市御牧ケ原という大地で育った葡萄が、GIO HILLSでワインになり、清涼な風にのって皆さんの元に届けられるように」という想いが込められているのです。なぜベトナム語なのでしょうか?それは、隼人さんの学生時代にまで遡ります。

ベトナム・フエで日本語教師のボランティア
ベトナム・フエで日本語教師のボランティア

第2の故郷ベトナム

隼人さんは二十歳のころ、自分の進むべき道に悩んでいました。先が見えなかったと言います。当時はまだ、自分がワインづくりに関わることになろうとは考えてもいませんでした。

ちょうどその時、ベトナムで子供たちに日本語を教えるボランティアの話があり、自分を見つめるきっかけにしたいと、生まれ育った小諸を一度離れることを決意。ベトナムへ赴任します。当初の任期は1年でしたが、子供たちのためにもっと尽くしたいという止められない思いが募り、再びベトナムへ渡ります。そんな中、ベトナムで思いがけない出会いがあります。今の奥様と出会ったのです!もちろんベトナムの方です。

ベトナム生活5年が過ぎたころ、国際情勢の影響もあり、ビザ発給の問題で、帰国を余儀なくされます。隼人さんは奥様を連れて帰国。それは2015年のことで、ちょうど千曲川ワインアカデミーが開講する年でした。

尊敬する父親と
尊敬する父親と

父親の想いを継ぐ

「やっぱり自分は中棚荘が好きなんだ。」

隼人さんは実家に戻ってきて、中棚荘は安心できる場所だと改めて実感したと言います。5代目壮主である父親の富岡正樹さんの背中をみて育った隼人さん。「自分たちで育てた地元の食材を使った料理でお客様をもてなしたい、究極の農産物としてワインをつくりたい」と、正樹さんは中棚荘を切り盛りする傍ら、ワイン葡萄を有機栽培し、委託醸造でワインを造っていました。

中棚荘ワインは和食にとてもよく合い、マリアージュを堪能できるワイン会も定期的に開催されています。ワイン好きの人たちの常宿として人気が高いのは、ワインを中心とした心のこもったおもてなしがあるからなのです。

登録有形文化財の食事処「はりこし亭」で楽しむワインは格別
登録有形文化財の食事処
「はりこし亭」で楽しむワインは格別

隼人さんがワインづくりを志した一番のきっかけは、このような中棚荘を作り上げ正樹さんの存在です。父親がつくったワインを飲む機会も多く、そのワイン熱におかされたと笑いますが、なんでも自分でこなす父親への尊敬の念、そして想いを継ぎたいという意思が、隼人さんをワインの道に駆り立てたのでした。

隼人さんは千曲川ワインアカデミー第1期生としてワインづくりを学び、その世界へ没頭し始めます。卒業後はアルカンビーニュでアルバイトをし、醸造技術をさらに学びます。そして今年(2018年)、ついに親子念願のワイナリーを立ち上げることに。今秋の仕込みより、新ワイナリーがフル稼働となる予定です。

風が吹き抜けるGIO HILLSワイナリー建設予定地
風が吹き抜けるGIO HILLSワイナリー建設予定地

点と点をつなげる役割

隼人さんが中長期ビジョンとして掲げるのが「点と点をつなげる役割」。

地元小諸市、そしていずれは長野県全域にワイン文化をもっと根付かせたいと考えています。もちろんGIO HILLSワインリーや中棚荘にも多くの人に来てほしいのですが、それだけにとどまらず、その他のワイナリーも色々巡って、人々にワイン文化に興味を持ってほしいと語ります。

そのための取組は既にスタートしています。中棚荘では昨年より、ワインツアーを企画。「ヴィレゾンツアー」という名の、千曲川ワインバレーのワイナリーや名所を巡るツアーです。また近い将来、小諸市ワインフェスタを開催したいとのことです。楽しみですね。

さらに隼人さんが強調するのは、ベトナムとの懸け橋になること。これは隼人さんにしかできません。ベトナムの人たちにブドウ栽培やワイン、そして日本文化を学ぶ場を提供したいとのことです。現地での栽培も視野に入れていますし、ベトナム支社設立だって、隼人さんなら夢で終わらせることはないでしょう。

GIO HILLSワイナリーは一つの点にすぎないかもしれない。しかしここを介して、たくさんの人が繋がり、徐々に大きなうねりとなり、それが文化となる。隼人さんが二十歳のころ悩んでいた自分の進む道 ―― それが今では明確に見えています。そしてその挑戦が始まったのです。

取材日:2018年1月9日

千曲川ワインアカデミー1期生。中棚荘当主である富岡正樹さんの三男。
2018年にジオヒルズワイナリーを立ち上げる。栽培品種は、メルロー、シャルドネ、ピノノワール。

(取材/文 アグリマーケティング 田中 良介)

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