「生産者の言葉には深みがある。同じ言葉を発しても、ソムリエには決して真似ができない」
もともと、田中啓さんはソムリエとして、超一流のホテルやワインバーで働いていました。ホテルブレストンコート(軽井沢)、リッツ・カールトン(東京)、ワイングロッサリー(京都)等々。働き甲斐があったと言いますが、そのポジションを捨て、今は生産者としての道を歩んでいます。
なぜ、華やかにも見えるソムリエの世界から、生産者になったのか聞くと、その答えが冒頭のものでした。ソムリエは、ワインの世界に詳しく、表現力豊かにその魅力をお客様に伝えられる職業の人です。にもかかわらず、啓さんは「生産者の言葉の方が深みがある」と断言します。その想いが一気に高まったのが、京都のワインバーで働いていたときでした。様々な生産者と交流を持つなかで「自分も実感の伴った言葉でお客様へ伝えたい」とワインの作り手になる決断をしたのです。
その想いが間違いなく本物だと感じるのは、啓さんが目標に向けて、非常に勉強熱心なこと。千曲川ワインアカデミーを2期生として卒業したあとも、高山村のヴィンヤードで栽培研修を受け、さらに村に泊まり込みで「信州たかやまワイナリー」で醸造を学んでいます。