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Vol.5 成澤 篤人さん

ソムリエとしても地道に活動を続ける
ソムリエとしても地道に活動を続ける

2017年末に信濃毎日新聞に大々的にこんなニュースが出ていました。

「坂城にワイナリー開設へ 千曲川特区活用 日本公庫1億200万融資」

そこには坂城葡萄酒醸造の成澤篤人さんの写真が。ほかのスタートアップワイナリーが、資金集めに苦労しているなかで、これほどの融資を受けることができたのです。

これは、事業計画、実績、創業メンバーがしっかりしている証拠。成澤さんといえば、シニアソムリエとしてNAGANO WINEの振興に力をいれ、また本を執筆するなど、ワイン関係者のなかでは名の知れた存在です。はたからは、順風満帆にも見える、その背景を今回インタビューでじっくり聞かせていただきました。

オステリア・ガットのスタッフの皆さん
オステリア・ガットのスタッフの皆さん

成澤さんがシニアソムリエの資格を取ったのは、今から10年前の2008年。その後、2009年には義理の弟さんと2人で、長野市駅前にイタリアンレストラン「オステリア・ガット」を開業します。その時受けた融資が1000万円。「これで失敗したら、すべてが終わる。」と覚悟した言います。今回受けた1億円の融資よりも、当時のほうが、プレッシャーは大きかったとのことです。

2011年にはワイン葡萄を植えて、自ら栽培を始めます。このころから、10年後を目途にワイナリー設立の構想を抱いていました。インタビューのなかで、ここが本当に重要なポイントだと感じました。成澤さんは早い段階でその意思を抱き、自分の夢を実現するために、長期的な行動を続けたのです。

たとえば、ファン作り。地道にブログを書いたり、SNSで自分の活動を発信したりと、応援してくれる仲間を少しずつ集めました。またNAGANO WINE応援団を立ち上げ、ほとんど手弁当でしたが、ワインイベントを開催するなど、長野ワインの魅力を伝える活動にも力を入れてきました。

複数店舗を経営
複数店舗を経営

成澤さんがもっとも大切にしている理念があります。それは「仲間と一緒に夢を追いかける」こと。「オステリア・ガット」から始まった店舗に、今では「ラガッタ」と「粉門屋仔猫」が加わりましたが、それも全て、一緒に夢を追える仲間が集まった結果、事業が広がったと言います。

ワイナリーを立ち上げる時に、資金集めと同じく多くの人が悩むことがあります。それは醸造技術の習得です。成澤さんとて例外ではありませんでした。しかしその問題が、なんと最近解決したのです。アメリカ・ナパバレーで醸造に従事していた日本人女性が、醸造担当者として事業に加わってくれることになったのです。成澤さんは「運がよかった」と謙遜しますが、話をきいていると決してそういうわけではないことが分かりました。

きっかけは、その女性から、NAGANO WINE応援団のSNSページに「日本に帰国してワインづくりがしたいが、誰か紹介してほしい。」とメッセージが入ったとのこと。

成澤さんはすぐにコンタクトを取り、坂城葡萄酒醸造の一員になってもらう約束を取り付けました。これも成澤さんが作ったNAGANO WINE応援団というプラットフォームがあったから実現したことであり、決してラッキーだったわけではないと思います。

農家らしくなってきた!?(ソービニヨン・ブランの収穫)
農家らしくなってきた!?
(カベルネ・ソーヴィニヨンの収穫)

成澤さんが作るワインには2つのこだわりがあります。一つはデイリーワインの充実。NAGANO WINEは3000円以上するものが多く、これではワインのすそ野が広がらないと、ソムリエとして常日頃感じていました。よって比較的収穫量の多い品種「竜眼」に力を入れていく予定です。地元の人にも、ぜひ飲んで欲しいからです。

もう一つのこだわりは、地元坂城町の特徴を生かしたプレミアムワイン。坂城町は千曲川ワインバレーのなかで、特殊な土壌のエリアです。シャベルでもなかなか穴が掘れない固い土。このような砂礫土壌は、実はフランス・ボルドーに似ているとのことで、カベルネ・ソービニヨンの栽培に適していると成澤さんは考えています。

実際、成澤さんが栽培したブドウは糖度24度まで上がり、ワインのアルコール度数は14.5%に達します。日本ワインで、このようなパワフルなものは珍しく、これも成澤さんなりに坂城町の土壌を緻密に研究してきた結果なのです。

坂城町出身のアーティスト小松美羽さんがデザイン。ネコと葡萄と坂城町が描かれている。
坂城町出身のアーティスト小松美羽さんがデザイン。
ネコと葡萄と坂城町が描かれている。

今年(2018年)6月にはレストランを併設したワイナリーが完成します。しなの鉄道坂城駅から徒歩で数分の距離なので、ハンドルキーパーを気にすることなく、ワインを存分に楽しめます。

成澤さんは言います。
「すごく美味しく、自分の納得のいくワインをつくりたい。しかし、それを一代で実現できるとは思っていません。100年、1000年と続いていくのがワイン。自分がまず全力を尽くし、次の世代に渡せるようにしたい。」

常に長期視点でものごとをとらえ、構想をもって進めていく。これが成澤さんのスタイルなのだと感じました。

千曲川ワインアカデミー1期生。シニアソムリエであり、イタリアンレストラン「オステリア・ガット」オーナー。
NAGANO WINE応援団の元代表。著書に「本当に旨い長野ワイン100」がある。

(取材/文 アグリマーケティング 田中 良介)

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