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Vol.3 児玉 俊一さん

地域に愛されてきた児玉邸
地域に愛されてきた児玉邸

シルクからワインへ

地域の財産「児玉家住宅」

東御市にある児玉俊一・恵仁夫妻のご自宅は、築100年を超える歴史的建造物。十二棟からなる大きな住宅で、国の登録有形文化財にも指定されています。

ここはかつて養蚕が盛んな地域でした。児玉邸敷地内には大型の蚕室が現存しています。 一般的に蚕室というと、建物2階で蚕を飼育する民家構造をイメージする人も多いと思いますが、児玉邸では一つの建物自体が蚕室となっており、地域でこれほどのスケールのものは他に見られません。

母屋の奥に大きな蚕室が現存(右側)
母屋の奥に大きな蚕室が現存(右側)

しかし養蚕業の衰退というあらがえない歴史のなかで、もう長い間使われない状態が続いていました。このまま朽ち果てていくのを傍観していていいのか・・・、先人が紡いできた歴史に新たな息吹を与えることはもうできないか・・・。

俊一さんは文化財である実家を守っていく責任と自分の生きがいをどうやって両立させるか長い間迷っていました。実は俊一さんは児玉家住宅で生まれ育ったわけではありません。子供のころは父親の仕事の関係で全国を転々としており、数年前までは横浜に住んでいました。東京の大手企業を退職したあとも友人の仕事を手伝うなど、自分の生き方を模索。しかし頭の片隅で、常に児玉邸のことが離れませんでした。

栽培を通して自然の厳しさを実感
栽培を通して自然の厳しさを実感

そんなときにヴィラデストワイナリー玉村豊男さんご夫妻から「蚕室をワイナリーにするとフランスの古いワイナリーみたいで面白い。」と言われたことが大きな転機となります。

ワインづくりに取り組むことによって、この家を長きにわたり守っていけるのでは?地域に愛されてきた財産を、引き継いでいく使命。紆余曲折してきたなかで、たどり着いた答えが、ワインだったのです。俊一さんは横浜から東御市への移住を決断します。

屋号紋がラベルデザインに
屋号紋がラベルデザインに

次の100年に向けて

児玉家住宅とワイン ―― 次の100年に向けて新たな挑戦が始まりました。代々続く児玉家の、いったい誰がこのような展開を予想したでしょうか。

2014年より自宅のすぐ近くにワイン畑を構え、メルローを栽培。俊一さんは翌年に千曲川ワインアカデミー1期生として、栽培、醸造、経営について学びます。同期生のなかでは一番高齢の俊一さん。新しいことを習得するのは大変でしたが、持ち前の明るさと前向きさで、必死に学び卒業します。

「大型養蚕農家として建てられた我が家が、ワインに関わっていくことで、この地域の“シルクからワインへ”の流れに貢献したい」と語る俊一さん。その挑戦には、地域を大切にしたいという温かみが感じられます。

現在では園庭でコンサートを催したり、ワインツアーを受け入れたりと、児玉家住宅に人々が集えるイベントも徐々に試し出しているところです。

将来的には、息子たちにワインづくりを引き継ぎたいとのことです。そのために、今は基盤を整える時期。もちろん苦労もありますが、“もがき楽しんでいる姿”を子供たちに見せたいと、明るく話します。ファミリービジネスとしてのワインづくりです。次の世代へバトンを渡せれば、お家もさらに喜んでくれることでしょう。

ご次男の奥様がドイツ人であることもあり、この先はドイツ系の品種にも挑戦したいとのことです。

ファーストヴィンテージお披露目会では笑みがこぼれる
ファーストヴィンテージ
お披露目会では笑みがこぼれる

ファーストヴィンテージ「児玉メルロー2016」が遂にリリース

先日東京で開催された千曲川ワイン倶楽部の交流会。そこでファーストヴィンテージがお披露目されました。

参加者からは「ファーストヴィンテージとは思えない果実味と香り」との嬉しい声も聞かれました。2016年は長雨の続いたブドウの品質管理が難しいシーズンで、収穫したブドウの病果を、徹夜で取ったことを思い出したと言います。

「シルクからワインへ」―― 大きな変遷のなかで、俊一さん恵仁さんは、これからも着実な歩みを続けていくことでしょう。

千曲川ワインアカデミー1期生。63歳からワインづくりを始める。現在の栽培品種はメルロー。千曲川ワイン倶楽部の事務局も務める。

(取材/文 アグリマーケティング 田中 良介)

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