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Vol.29 大谷内 行也さん(後編)

「副業ワイナリー」という新しいスタイル

CHATEAU KNOTの大きな特徴の一つが、「副業ワイナリー」と呼ぶ独自のスタイルです。現在、畑を支えているのは、専業で働く大谷内さんの父親、会社員として仕事を続けながらワイン造りに携わる二人、そして大谷内さんの妻を含めた4人のチーム。全員がワイン造りだけを仕事にしているわけではありません。そのスタイルには、メリットもあります。

「経済性を最優先にしなくてもいい」
時間をかけてブドウを育て、品質を優先しながらワイン造りに向き合えることは、CHATEAU KNOTならではの強みです。一方で、毎日畑を見ることができないため、栽培のノウハウを蓄積したり、病害などの変化にすぐ対応したりすることには難しさもあります。

特に能登では、地域の生産者同士で情報を共有することも重要です。現在はセイズファームに委託醸造を行いながら、近隣のワイナリーとの連携も今後さらに深めていきたいと考えています。

能登の自然と向き合いながら、畑を育てる

能登でのブドウ栽培は、決して簡単ではありません。年によって課題は変わり、ある年には思いがけない水不足にも直面しました。日本でブドウを育てる中で水不足になるとは想定しておらず、太い水道を引いていませんでした。

一方、梅雨が長くなれば病害への対応も必要になります。専業ではないからこそ、畑にいない時間をどう補うかという課題もあります。父親から送られてくる畑の写真を見ながら、離れた場所から状態を判断し、対応を考えることも少なくありません。
能登という土地で、年ごとに異なる自然と向き合いながら、一つずつ経験を積み重ねています。

目標は自家醸造、そして日本ワインを世界へ

現在、CHATEAU KNOTでは約5,000本のブドウ樹が植えられています。最初に2,000本を植え、2025年にはさらに3,000本を植樹。今後は合計1万本まで増やすことを目標にしています。そして、自家醸造を目標にしています。

現在は委託醸造を行っていますが、3~5年ほどを目安に、自らの醸造所を構え、自家醸造へ移行することを目指しています。

さらに10年後には、畑の面積と生産量を増やし、2万本ほどのワインを造れる規模へ。その先に見据えているのが、日本ワインの魅力を国内だけでなく海外にも発信することです。

CHATEAU KNOT看板犬「める郎」
CHATEAU KNOT看板犬「める郎」

「日本食に一番合うのは日本ワイン」能登から広げる未来

「日本食に一番合うのは日本ワインだと思います」
CHATEAU KNOTが届けたいのは、国内のワインファンだけではありません。日本ワインを飲みたいと思う人を増やし、それを日本国内だけでなく、海外の人にも新しい日本文化として楽しんでもらいたい。そんな思いを持っています。

2025年には初リリースとなるワインを150本販売。初ヴィンテージは、ブドウの成熟がまだ十分ではなかったこともあり、軽やかな味わいに仕上がりました。一方で、土地の特徴としてタンニンの強さが表れ、今後の可能性も感じられるワインになったといいます。

栽培技術を高め、ブドウそのものの成熟をさらに引き上げることで、目指すポムロールに近づいていく。そして、日本の旨味や清らかさを重ね合わせる。

ポムロールへの憧れから始まったワイン造りは、いま、能登という土地でしか生まれない日本ワインを探す旅へと変わりつつあります。1万本のブドウ樹、そして自家醸造の醸造所。その先には、日本ワインの魅力を世界へ届けるという大きな目標があります。能登で育つブドウと向き合いながら、CHATEAU KNOTの挑戦は、これからさらに新しいステージへ進んでいきます。

CHATEAU KNOT(シャトー・ノット)

・ウェブサイト:https://chateauknot.jp/
・Instagram:https://www.instagram.com/chateauknotwine/
・Youtube:https://www.youtube.com/@ChateauKnot

大谷内 行也(おおやち ゆきや)

千曲川ワインアカデミー7期生。CHATEAU KNOT(シャトー・ノット)を共同で立ち上げ、ワイン造りに取り組む。大阪大学工学部を卒業後、ケンブリッジ大学で工学系の修士課程を修了。現在も会社員として働きながら、能登町でブドウ栽培とワイン造りを行っている。能登の赤土に着目し、メルロを主体としたブドウ栽培を進め、将来は自家醸造を目指している。

日本ワインなび主宰/レコール・デュ・ヴァン講師 田口あきこ
(取材/文 日本ワインなび主宰/レコール・デュ・ヴァン講師 田口あきこ)