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Vol.27本多 雅人さん 本多 立樹さん(前編)

石川県金沢市俵町。4haに広がる畑を舞台に、父から息子たちへと想いをつなぐワイン造りを続ける「Vin de la bocchi farm&winery」があります。親子二代で歩むこのワイナリーの始まりは、単に「ワインを造りたい」という夢からではありませんでした。そこには、家族の未来を考えた一つの決意がありました。

「息子が働ける場所を残したい」家族の想いから始まったワイナリー

「親としてこの子に何ができるのかと考えた時に、お金を少し残してやるよりは、彼が一生働けるような場所を作りたい。」雅人さんと奥様の願いから「ヴァン・ド・ラ・ボッチ」の物語が始まりました。

ご夫妻には二人の息子さんがいます。次男の響さんは自閉症で、成長するにつれて親としてどのような環境を残してあげられるのかを考えるようになったといいます。その思いを形にするため、奥様はワインエキスパートの資格取得をはじめ、ワイナリー設立に必要な知識を学び、土地探しや資金計画にも取り組みました。その後、会社員だった雅人さんも早期退職を機に合流しました。

500人の手で植えられた畑

土地探しでは石川県の協力を得ながら、県内各地の耕作放棄地を探しました。「能登の入り口から加賀の南の方までかなり探しました。」しかし、事業計画である4haの耕作放棄地という条件に合う場所はなかなか見つからず。そんな中、最後に金沢市に紹介してもらったのが、現在の畑がある俵町でした。

畑の植栽が始まったのは2016年。植樹の際には、奥様の呼びかけで約500人もの方が苗植えに参加しました。多くの人の力によって始まった畑は、現在では約1万本、19品種のブドウが育つ場所となっています。畑は5カ所に分かれていて、合計すると約4ha。密植に近い植栽方法を採用し、一本一本の樹と向き合いながら栽培を続けています。

土壌は、近くにある旧火山からの噴出物に由来しています。岩や砂を含む土壌は水はけが良く、ブドウ栽培に適した環境を生み出しています。

「ヴァン・ド・ラ・ボッチ」に込めた名前の意味

ワイナリー名「ヴァン・ド・ラ・ボッチ」は、俵町にゆかりのある米俵の蓋「桟俵(さんだわら)」の別名「桟俵ぼっち」から着想を得て生まれました。名づけ親は、ヴィラデストワイナリーの創立者 玉村豊男さんです。

「一人ぼっち」というと寂しい印象がありますが、「ぼっち」そのものは、一人ひとりの存在を表す言葉。雅人さん夫妻が思い描いたのは、障がいのある次男・響さんだけでなく、地域の障がいのある方々が、それぞれの持ち場で生き生きと働くワイナリーの姿でした。一人ひとりが力を持ち寄り、その積み重ねによって一本のワインが生まれる。そんな未来への願いが、「ヴァン・ド・ラ・ボッチ」という名前には込められています。

「最初はやりたくなかった」立樹さんが見つけたワイン造りの魅力

現在、主に栽培を担当する立樹さんが家業に加わったのは2017年でした。もともとは会社員として別の道を歩んでいましたが、植樹の時期に人手が必要になり、畑を手伝うことになったのがきっかけでした。

「室内で事務仕事をしていたので、初めての外仕事でした。汗をかくし、泥まみれになるし、虫も嫌いで。そんなことやりたくないと思っていました。」しかし、毎日畑に通う中で、少しずつ気持ちが変化していきます。

「ブドウの樹って、どんどんスクスク育っていくんです。」実ったブドウを収穫して、色々な人の経験や力が合わさってワインになる。その結晶がワインであることを知った、と立樹さんは語ります。2017年には委託醸造を経験し、栽培から醸造まで一連の流れを学びました。

「良いブドウを作るにも、良いワインになるにも、必ず理由がある。」その理由を考えて探すことが楽しいと思ったのが、仕事として興味を持ったきっかけだったそうです。

家族のために始まったワイナリーは、立樹さんにとっても、自分自身の未来を見つける場所になっていきました。

Vin de la bocchi farm&winery
・ウェブサイト:https://labocchi.jp/
・Facebook:https://www.facebook.com/LabocchiVDB/
・Instagram:https://www.instagram.com/p/BxG0Tpcgrko/

本多 雅人(ほんだ まさと)

千曲川ワインアカデミー1期生。「Vin de la bocchi farm&winery(石川県金沢市俵町)」栽培・醸造責任者。家族の未来を考えたことをきっかけにワイナリー設立を決意し、2016年に4haの畑へ約1万本のブドウを定植。2020年に醸造所を設立した。農福連携による誰もが働ける場づくりという未来を奥様と一緒に描いている。

本多 立樹(ほんだ りつき)

千曲川ワインアカデミー6期生。「Vin de la bocchi farm&winery(石川県金沢市俵町)」栽培・醸造担当。2016年の植樹から畑づくりに関わり、2017年より本格的に家業へ参加。現在はブドウ栽培を中心に、醸造や販売にも携わっている。家族で始めたワイナリーの未来を担う存在として、ワイナリーを地域の人々が集う場所に育て、障がいのある方が「ここで働きたい」と自然に集まる場所になることを目標にしている。

日本ワインなび主宰/レコール・デュ・ヴァン講師 田口あきこ
(取材/文 日本ワインなび主宰/レコール・デュ・ヴァン講師 田口あきこ)