生産者ストーリー

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Vol.24 太田 匠さん(後編)

ワイナリーを建設したい

太田さんが5年以内に成し遂げたい目標を聞いてみた。それはワイナリーを建てること。
太田さんは品質の低いものを売るのは相手に失礼だという真摯さが強いあまり、ワインをリリースしてから初めて営業を開始することになったという。

「今私のことを誰も知らないし、『1期生にこんな人いたの?』ってよく言われるんですけど、それはそうなんですよ。私、ずっと畑にこもっていたから。農業の品質を上げること以外何も考えていなかったから。だから今の目標としては、まずは営業を頑張ること。将来的に全部の畑がフル生産になった大量のワインを自分のワイナリーで造って、その本数がちゃんと売れるように。」

誰でも代替可能なシステムに落とし込みたい

就農前の研修期間中、太田さんはたくさんの講習会に出向いた。もはや他の人には見えないものが見えているレベルのリンゴ栽培農家のお爺さんたちから学ぶこともある。太田さんは、そういった卓越したスキルをシステムに落とし込めないかと考えている。

その理由は、「仕事を選ばなければどんな仕事をしても食べていける」という言葉の外側にいるような、生きづらい人の為の道具になるのではないか、と思うから。

「今よりも圧倒的に品質の高いものを採れる方法を私なりに考えてシステムを確立して、誰でも代替可能なシステムに落とし込みたい。」

太田さんは80歳まで生きて農業を続けようと意気込んでいる。その頑張った結果を後の世のお土産として、データとして残したい。少しでも長野県の耕作放棄地が減ったり、地域が活性化したり、皆が長生きしてもいいかなと思えるような世界になるよう貢献したい。彼を突き動かしているのは心やさしいモチベーションだ。

果樹園は人にやさしい

「お酒を飲まないとやっていられない」という言葉を聞くことがあるが、そういう人たちは実際、お酒を飲むことでその人生をやっていられるようになる。ちゃんと生きられるようになるのであれば、お酒という道具は非常に価値がある。そのお酒を生み出すのは果樹園だ。

「これは人にやさしい畑だと思うんですよ。人を生きやすくするような価値のある果樹園。」太田さんはバルダー果樹園を見渡して笑顔で語る。

私が目指すワイン

「人を動かすものって暴力でもないし、巧妙な言葉でもない。高い価値だと思うのです。高い価値があれば、やはり人は動かせる。」

「ワインを試した事がない人にも、ワインを試したいと思えるような、圧倒的に高い価値を感じさせるようなワイン」を太田さんは目指している。

バルダー果樹園
・ウェブサイト:https://balder.base.shop
・YouTube:https://www.youtube.com/@BalderOrchard

太田 匠(おおた たくみ)

千曲川ワインアカデミー1期生。東京都で生まれ育ち、その後長野県に移住。ワイン用ブドウ園(上田市)とシードル用リンゴ園(東御市)を運営。「最大最強の香り」を持つワイン、シードルを生み出そうと日々農業に従事している。

日本ワインなび主宰/レコール・デュ・ヴァン講師 田口あきこ
(取材/文 日本ワインなび主宰/レコール・デュ・ヴァン講師 田口あきこ)