千曲川ワインアカデミーはこれまでに多くのワイン生産者を輩出しています。
今回はそのうちの一人、上田 俊彦さんを紹介します。
Vol.23 上田 俊彦さん(前編)

自己完結型・自己責任型のビジネスをやってみたい
上田さんの畑は長野県小諸市の糠地地区、通称「ゲッタ」と呼ばれている標高900m前後のところに位置している。2019年秋に耕作放棄地の開墾を始め、2020年春からブドウ樹の定植を開始した。本州では、冷涼な気候を求めて高い標高の土地でブドウ栽培を始める方が増えている。
以前、上田さんは誰かが造ったものを売る手伝いをする仕事、いわゆるセールスプロモーションに近い仕事をしていた。それで、退職後は「自分が造ったものを自分がその魅力付けをして、自分で売っていくという事をしたかった。」という。
ブドウ栽培に辿り着いたのは、ワインが好きだったということが一番大きな理由。開墾して、苗木を植えて、栽培してできたブドウでワインを造る。更にそのワインをブランディングして売ってみる、という自己完結型で自己責任型の商売をしたい、その一心で上田さんはワイン造りの世界の扉を開けた。

ビオディナミ農法を採用した理由
getta winesはビオディナミ農法を採用していることで知られている。上田さんのお子さんは幼稚園の時からずっとシュタイナー学校(※1)に通っていたので、学校での付き合いでビオディナミについて知る機会が多かったという。また、お子さんがアトピー性皮膚炎だったこともあり、家で食べるものは有機栽培的なものが多かったそうだ。
このような背景から、自分でブドウを栽培する時にケミカルなものを沢山使う選択肢はなく、有機でやる前提だった。
※1 シュタイナー学校…ドイツの哲学者ルドルフ・シュタイナーが提唱した教育法に基づく学校。ルドルフ・シュタイナーはビオディナミ農法の提唱者。

その土地をありのまま表現するワインを造りたい
上田さんの畑は10年~30年くらいの間、耕作放棄地だった土地を開墾しているので、昔どのような作物が植えられていて、どのような残留農薬があるか、ということをあまり気にせずにその畑の土地のままをブドウにしている。
「肥料を全くあげないし、耕しもしない。草刈りも最低限。土地のありのままをドーピングしないで造ってるっていうそういう感じ。なので畑ごとに樹の成長が違いますし、それでうちのブドウのワインの味になっていくのかなっていう思いで造っています。」上田さんは畑を遠くまで見渡しながら語る。
取材当日、畑ではボランティアスタッフの方たちと笠掛けの作業が行われていた。ケミカルな農薬を使わない分、このように手を掛けて病気から守る努力をしているそうだ。
上田 俊彦(うえだ としひこ)
千曲川ワインアカデミー4期生。東京都出身。長野県小諸市の糠地地区、通称「ゲッタ」と呼ばれる標高900m前後の場所で2020年からブドウ樹を定植。ビオディナミ農法を取り入れ、無施肥、不耕起、無化学農薬の有機的な栽培を行っている。