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Vol.2 池田 岳雄さん

ご家族や地元の人たちの協力が大きな力となっている
ご家族や地元の人たちの協力が大きな力となっている

雲海の広がるヴィンヤード

「ついにここまで来たんだな。」

ソーヴィニヨン・ブラン1100キロを、醸造委託先であるアルカンヴィーニュに持ち込んだ池田岳雄さんは語りました。

定年後第2の人生をスタートし、ヴィンヤードを立ち上げて丸三年。2017年9月29日についに初仕込みの日を迎えました。苦労もしながらここまでたどり着いた安堵感、そしてこれからさらに良い葡萄づくりをしなければならないという使命感が生まれてきたと言います。また今まで支えてくれた家族、地元の人たち、そして土地の先人への感謝の念も同時に沸き上がってきました。

標高900mからの絶景!
標高900mからの絶景!

ヴィンヤード名は「テール・ド・シエル Terre de ciel」。天空の大地という意味です。畑のある長野県小諸市糠地(ぬかぢ)地区は標高約900mに位置します。そこからの景色はあまりにも絶景。北アルプス・中央アルプス・八ヶ岳連峰・富士山や佐久・小諸・東御・立科・上田市街が一望できます。

しかし当初「なぜそんな無謀なところに畑を構えるのか。街中にも土地はあるのに。」と周りは大反対したと言います。糠地地区は、標高が高く、一般的にワイン葡萄栽培には不向きであると考えられていました。
それでも岳雄さんは、迷いなくこの土地を選びました。初めてここを訪れたとき、雲海の上に、当時荒廃地であった糠地地区が浮かび上がって見えたそうです。幻想的な美しい風景に引き寄せられるように、この地でのワインづくりを決意しました。

ソービニヨンブランの収獲
ソービニヨンブランの収獲

前職では20年間にわたって、通信を取り扱う会社の役員をしていました。だからビジネス感覚も兼ね備えています。岳雄さんは、れっきとしたビジョンをもってこの地を選んだのです。糠地地区は、南斜面のため標高のわりに暖かく、立地条件は決して悪くない ―― 目指す高品質で限定生産のワインづくりには適した土地だと岳雄さんは確信しました。

ワインづくりを通して実現したいことがあります。それは、自然と融合した観光です。この美しい景観の土地を開墾し、遊歩道なども整備することによって、多くの人に訪れてほしいと考えています。和気あいあいと人が集まってきて、思い思いに林道を散策したりして、自然を満喫して帰ってほしい、そんな構想が岳雄さんの頭の中にははっきり描かれています。糠地地区は、山の上にありますが、小諸ICから車で約7分の距離。実はアクセスが抜群で、軽井沢や東京からも気軽に訪れることができます。

畑入り口の熊の置物はグロワーの家族を表す
畑入り口の熊の置物はグロワーの家族を表す

岳雄さんは、国蝶に指定されているオオムラサキの保護活動にも、地元の皆さんと一緒に携わっています。糠地の森の自然を生かした生態保護プロジェクトです。これら活動を通して、この地をもっと魅力的な場所にしていこうと考えています。

ご家族で共同作業を営む岳雄さん。奥様と娘さんだけでなく、週末はお孫さんたちもお手伝いに来てくれます。お孫さんたちにとっては、遊びの場であり、自然を学ぶ場であり、おじいちゃんと会話をする場なのです。

「ワインづくりを始めて、家族とのコミュニケーションが増え、結束力が高まりました。」家族のことを語るとき、岳雄さんの顔がほころびます。畑の入り口にある熊の置物はワイングロワーの家族を表しているのですが、家族を大切にする温かみが伝わってきます。

仕込み作業をじっと見つめる岳雄さん。 ファーストヴィンテージは2018年夏リリース。
仕込み作業をじっと見つめる岳雄さん。
ファーストヴィンテージは2018年夏リリース。

現在の栽培品種はソーヴィニヨン・ブラン、ピノ・ノワール、ピノ・グリ、シャルドネ、メルロ、リースリング、ミュラー・トゥルガウ。2018年夏にはファーストヴィンテージ(ソーヴィニヨン・ブラン)が約1000本仕上がってきます。将来的には、難しい品種ではありますが、ピノ・ノワールに力を入れていきたいそうです。また小諸市の生産者仲間と共同醸造所を立ち上げることも視野に入れています。まずは足元を固めながら、ワイナリー設立に向けた計画をじっくり練っていきたいと考えています。

ぜひ特別な日に飲んで欲しい ―― 糠地地区の風土と特徴を生かした、“池田さん家”のワインを飲める日も、そう遠くはありません。

取材日:2017年11月21日

<2019年6月18日 追記>
・ファーストヴィンテージ4種類を2018年にリリースされました。
・ワイン用ブドウジュースや地元のりんごジュース・ジャム、菜の花油も小諸・佐久・軽井沢の道の駅で発売。
・2020年にワイナリーの開業予定。
・また、地元の皆さんと蝶の保護活動に力を入れ、自然と調和するワインづくりを目指していらっしゃいます。

千曲川ワインアカデミー2期生・2期生同窓会長。小諸ワイングロワーズ倶楽部会長。

現在は地元のふじリンゴを使ったシードル、りんごワインを販売している。また限定生産のワイン葡萄100%ジュース(ピノ・ノワール、シャルドネ、ソーヴィニヨン・ブラン)の人気も高い。軽井沢発地市場にて購入可能。2018年夏にはワインファーストヴィンテージをリリース予定。

(取材/文 アグリマーケティング 田中 良介)

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