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Vol.10 田口 航さん

数々の名ワインを生み出してきた上田市東山にヴィンヤードを構える
数々の名ワインを生み出してきた上田市東山に
ヴィンヤードを構える

長野県上田市塩田平の東側にある小高い丘。この心地よい風が吹き抜けるエリアは東山と呼ばれ、知る人ぞ知るワイン用ブドウの名産地です。田口航(タグチコウ)さんの「Sail the Ship Vineyard」は、この美しいワイン葡萄畑の一角にあります。

航さんは、アルバイトをしていたスペイン料理店でワインと料理のマリアージュやペアリングを教えてもらったことの影響で、学生時代からお酒や食文化に強い関心を持つようになりました。

ワーキングホリデー時代の影響も大きい
ワーキングホリデー時代の影響も大きい

また大学を自主留年し、アイルランドへワーキングホリデーに行ったとき、地元のパブに通いながら、地域に根差した“お酒文化”というものにのめり込んでいきます。当時から、航さんが進むベクトルは定まっていたのかもしれません。

卒業後は鉄を扱う商社に就職しましたが、やはりお酒に携わりたくて2年で退職。その時たまたま募集していた天橋立ワイナリー(京都)へ転職し、念願のお酒業界で働き始めます。ブドウ栽培から醸造まで担当し、やりがいのある毎日を過ごしました。しかし徐々に次のステップに進むことを考え始めます。そうです、自らの力でワインを作りたくなったのです。

衝撃的なワインとの出会いがあったわけでなく、若いころから好きなことを追求し、同時に学んでいたら、あるべき方向へ進み始めていた、というのが航さんの大きな特徴かもしれません。

尊敬するヴィラデストワイナリー小西社長と
尊敬するヴィラデストワイナリー小西社長と

航さんはワイン栽培の適地を探すため、「日本のワイナリーに行こう」という本を片手に各地を巡ります。長野を回っていたとき、ヴィラデストワイナリーの醸造長である小西超さん(現社長)に出会い、信州うえだファーム(※)にワイン葡萄研修生として応募してみたらどうかとアドバイスを受けます。

そこでは2年の研修で、栽培を学べるだけでなく、農地の斡旋、資金の肩代わりなど、新規就農に必要なあらゆる支援を受けられます。また千曲川ワインアカデミーでの研修もカリキュラムに含まれており、作り手を目指す自分にとって必要な場所だと確信し、信州うえだファームへ飛び込みます。

尊敬する醸造家であり、現場を知り尽くした小西さんからの適切なアドバイスが、自分にとって大きな転機につながったと航さんは感謝の念を語ります。

広い畑であるため、農作業の効率を上げる工夫をしている
広い畑であるため、農作業の効率を上げる工夫をしている

現在は東山地区に3.2町歩のヴィンヤードを構え、シャルドネ、ソービニヨンブラン、メルロー、カベルネソービニヨン、カベルネフラン、シラーなどの品種を栽培しています。とくに楽しみにしているのが赤ブドウ品種のカベルネフランとシラーです。なぜなら、ここは日当たり・風通し・水はけにおいて、特に赤品種栽培の条件がそろった、数々の銘ワインを生み出してきたエリアだからです。

ワインや食文化をこよなく愛する
ワインや食文化をこよなく愛する

ヴィンヤード名の「Sail the Ship Vineyard」は、自分の名前が「航」であることと、ビートルズの好きな歌詞から取ったとのことです。有機栽培をし、亜硫酸塩の使用を極力抑えたワインをつくっていきます。来年にはファーストヴィンテージをリリースする予定で、数年後にワイナリーを設立したいと考えています。しかしこれらはスタート地点にすぎません。毎年改良を重ね、心から美味しいと思える理想のワインを追求し、家族や友達にも飲んでもらいたいと熱く語ります。

航さんは、冬の間、日本酒の酒蔵でアルバイトもしています。これは半分趣味とも言えますが、同時に醸造という共通点から、学びを得ているのです。好きなことと学びが一体化した航さんのお酒にかける情念は並々ならぬものがあり、これが力強い原動力になっていると言えるでしょう。将来がとても楽しみです。

※ JA信州うえだの子会社で、新規就農を希望者に対して就農支援を実施している。

千曲川ワインアカデミー1期生。千葉県出身。天橋立ワイナリーで4年間経験を積んだ後、長野県上田市富士山にヴィンヤード「Sail the Ship Vineyard」を構える。栽培品種はシャルドネ、ソービニヨンブラン、メルロー、カベルネソービニヨン、カベルネフラン、シラーなど。2019年にファーストヴィンテージをリリースする予定。

(取材/文 アグリマーケティング 田中 良介)

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