小諸の新名所:飯綱山公園にスタラス小諸
ワイナリー&ショップ、レストランがオープン 株式会社グレーベ(小諸市)
(スタラス小諸:手前がワイナリー&ショップ、上段がレストラン棟、バックに小諸高原美術館)
小諸市北西の飯綱山に位置し、浅間山から南アルプス、さらに北アルプスまで一望、晴れた日には富士山も!その全部を見渡せるレストランとワイナリー&ショップ(Komorokko Farm &Winery)が3月にオープンしました。
2018年から小諸市で耕作放棄地の開墾を開始し、ワインぶどうの苗を植えていた株式会社グレーベ(Greve-t, 吉岡秀之社長)は、飯綱山公園を対象に2021年小諸市が公募したPark-PFI* 事業者に応募、同年12月に選定されました。
Park-PFIは全国で100件以上活用されていますが、長野県では初めての事例となります。
*Park-PFI(公募設置管理制度):民間の資金と経営能力・技術力を活用して公園利用者の利便性を向上させる。
カフェ等の収益施設を設置し、そこからの収益の一部を活用して周辺の園路や施設の整備・改修等を行うもの(2017年法改正)。
今回のPark-PFIで作られたスタラス小諸(STARRACE KOMORO)のテーマは「農業で人と人をつなぎ、ふれあいを生み出す」。
老若男女みんなにとって居心地のいいスペースとなることを目指します。
株式会社グレーベ(小諸市菱平)はぶどう栽培、ワイン醸造、野菜や米などを生産・販売する農地所有適格法人です。
2019年、吉岡社長と取締役の益田拓也さんが千曲川ワインアカデミー(以下アカデミー)を受講、同年ぶどうの苗の定植を開始しました。
2020年にはさらに社員の新津謙壱郎さんがアカデミーを受講し、卒業生は3人となりました。
現在は小諸市内の10ヶ所約7.6haを開墾、標高650~950mに約18,000本のぶどうを栽培、必要最低限の農薬でテロワールを生かしたワインづくりを進めています。
今後、圃場は10haまで広げる予定です。
「土日の授業に出て、平日は本社(親会社)の仕事、さらに開墾をすすめていたので、1年半は小諸と東御と尼崎をひたすら移動。かなりハードでした」と吉岡社長は振り返ります。
フィールドワークが好きという吉岡社長も圃場での作業に参加し、荒廃地の開拓はかなりのスピードで続いています。
(乗用草刈機に操って作業中の吉岡社長)
栽培品種はピノ・ノワール / メルロー / カルベネ・フラン / カルベネソーヴィニヨン / シラー / マルベック / ピノタージュ / シャルドネ / リースリング / ソーヴィニョン・ブラン / ピノグリ / ゲヴェルツトラミネール / ケルナー / アルバリーニョ / セミヨン
10ヶ所以上となった圃場それぞれのテロワールとの相性を求めて、多品種の栽培をしているのだそうです。
定植後2年目の2021年、予想以上にぶどうの収穫量が上がったため、マザーバインズで委託醸造した「0 Vintage」を今年3月リリースしましたが、3/20のショップオープン後まもなく完売。
今年秋にはアルカンヴィーニュに委託して醸造したファーストヴィンテージ(シャルドネ、リースリング、ソーヴィニヨンブラン、ピノノワール、メルロー、カベルネフランといったラインナップで)のリリースを予定しています。
(Komorokko Farm &Winery 0 ヴィンテージワイン)
2023年の収穫からは自社ワイナリー(Komorokko Farm &Winery)で醸造します。
ワイナリーに並ぶのはステンレスタンクに加え、コンクリート エッグ タンク。
あまり見慣れない卵形のコンクリートタンクを採用した理由は、重くて輸送費がかさむというデメリットはあるものの、外気温の影響を受けにくく、角が無く自然対流が行われ上下の温度差が少ない、また微量酸素の供給によりワインの表情が豊かになるから、とのこと。
ワイン5~6万本分の生産能力があります。
ワインの味や風味のためでもありますが、見て楽しいわくわくするワイナリーを作っていく事も考え、コンクリートエッグを採用しました。
実際に他のワイナリーとは違い、不思議な空間に見えます。
駐車場は公園内各施設共有で、美術館を訪れた人がそのままスロープでレストラン棟にいくこともできます。
テイクアウトメニューも用意されているので、公園内で雄大な景色を観ながらドリンクや軽食が楽しめます。
また店内はペットOK。
ペット用ウォーターサーバー、ペットフードも完備しています。
飯綱山ドッグランで遊ばせたあとペットといっしょに食事が楽しめます。
レストラン棟では主に地元の食材を使った3つのレストランがあります。
・GK(グロワーズキッチン):イタリアン&カフェレストラン、8:00~21:00。
新鮮野菜をふんだんに使ったイタリアンメニューのランチ・ディナーに加え、朝日を浴びながらの朝食が楽しめます。
・KOMOROJIN:浅間山連峰を眺めながら、七輪で焼く本格焼肉・ジンギスカン、11:30~21:00。
・TEPPAN Shu:プライベート空間でシェフが焼く本格鉄板焼き、17: 00~21:00。
※ランチは平日でも予約した方が安心とのことです。
レストランの詳細リンク:https://www.starrace.jp/restaurant/
(夕暮れ時のテラス席)
公園内に増設した施設は他にもあります。
・キッズパーク:木製遊具で遊べる
・芝すべり広場:天然芝60mの大迫力
・農業体験ファーム:年間を通して野菜の収穫体験・購入ができる
既存の施設はどれも充実した内容ながら、市民でさえまだ行ったことがないという声が聞かれます。
スタラス小諸をきっかけに多くの人が利用することが期待されます。
小諸高原美術館・白鳥映雪館は年間を通して、白鳥映雪や伊東深水、丸山晩夏の作品が鑑賞でき、海野和男昆虫写真展、ADC展、小山敬三記念公募展など企画展が開催されます。
県営ハローアニマルに併設されている「飯綱山ドッグラン」はワンちゃん好きに人気です。
また飯綱山の最上部は戦国時代の山城・富士見城跡に歴史の広場があります。
スタラス小諸開店後、小諸市にある12の都市公園の中でも23.35haと最大の面積を有する飯綱山公園への来園者は、着実に増えています。
アートに興味ある人、犬好きな人、歴史に興味ある人、星空が好きな人、山々に囲まれた景色を楽しみたい人、あらゆる目的で来園する人々に、ワインに親しむきっかけを提供します。
ワイン愛飲者を増やす上でも有効な園内配置と言えます。
またワイナリー・ショップ前に野菜の販売コーナーを設置。
周辺の農家さんが野菜をセルフで店頭に並べることもできます。
お客様は地元の野菜を購入でき、地域の人は野菜販売で収入が得られる仕組みです。
このことも地域の人たちがこれまで以上に公園やワインに接点を持つことにつながります。
テーマである「農でつながる」ははじまっています。
グレーベのスタッフは自社の仕事だけでなく、小諸市のまちづくりにも魅力を感じています。
ぶどう栽培とワイン醸造責任者である小船睦巳さんは2021年に小諸市与良町に移住したのを機に、ワイングローワーズクラブに参加、観光局や市役所、まちタネプロジェクトのメンバー、そして小諸市農ライフアンバサダーの武藤千春さんなどとの交流を通して、小諸市の活性化にも積極的に参加しています。
多くの要素をもつグレーベの事業ですが、どれかに重点があるのではなく全体でバランスをとって推進しています。
ワインぶどう栽培、ワイン生産、レストラン、野菜・米の生産、ワイナリーショップ、公園管理などそれぞれに責任者がいます。
吉岡社長はそれぞれの社員に多くを任せていると言います。
若い力で景色が変わり、人の流れが変わり、観光や産業の活性化が生まれています。
集客などプロモーションはInstagramとYouTubeを徹底的に活用しています。
ドローンも導入し、畑の作業風景やワイナリーオープンの情報などを発信しています。
そのため、スタラス小諸オープン時には沖縄からやってきたというお客さんもいたそうです。
多くの点で画期的な株式会社グレーベのワイナリー経営はこれからも要注目です。
リンク:https://greve-t.co.jp
Instagram:https://www.instagram.com/greve.t_komorokkofarm_winery/
YouTube「こもろっこチャンネル」:https://www.youtube.com/channel/UC0-CG9ygrHLVfhd7usyX-3A
(こんな景色も見られる:ワイナリー&ショップ棟からレストラン棟を見上げる)
(吉岡社長(右)と醸造責任者の小船さん)