【レポート】ワイン用ぶどうでジュースを作って販売
加工所:信州味の里とうみ(東御市)
小規模のワイナリーが点在する千曲川ワインバレーでは、主な移動手段が自家用車で、食事の時にワインはあきらめる方も少なくありません。
一人がハンドルキーパーとなったり、買って帰ったりしています。
地元のリンゴジュースやノンアル飲料を選ぶこともありますが、同じワインぶどうから作られたジュースはワイナリーめぐりにつながる満足感があるようです。
昨年2021年に3回目のジュース加工をしたスターダストヴィンヤードの星野勇馬さん。
収穫や見学にと畑に車で来られた方にその場で楽しんでほしいということでワインぶどうのジュースを用意しました。
思いの外好評だったので、ぶどうが豊作だった2021年はジュースを増産、ネットショップや酒販店で約400本が完売しました。
さらに星野さんは家庭用のフードドライヤーを使い、自宅でワインぶどうのレーズンを自作しています。
現在は非売品として畑への訪問者やワイン購入者に提供されているそうです。
自家用であれば自宅での加工でも問題ありませんが、販売する場合には食品衛生上の要件を満たした加工所を利用する必要があります。
東御市にある「信州味の里とうみ」では少量のロットから加工を受けています(最小ロット50kg、最大ロット150kg)。
ここで加工するメリットは、加工の機械が揃っているので、高額の投資をせずに少量で加工・販売できること。
またレシピと材料は持ち込み可能なので、オリジナルの加工品を作ることができることです。
貼付を義務付けられている品質表示シールを作成してくれることも便利です。
ジュースの他にジャム、干しぶどう、フルーツソースなどが加工できます。
〈ジュースの工程例〉
1 洗浄
2 搾汁
3 熱処理、滅菌のため90℃で煮ます
4 ビン詰め(閉栓)
5 品質表示ラベル作成(貼るのはご本人)
※おもてラベルは依頼者が制作します。
50kgの場合、加工自体はおよそ半日で完了しますが、冷やしてから翌日納品されます。
熱処理を好まない生産者もいますが、賞味期限が短くなること、滅菌が完了しないと閉栓後発酵して栓が抜けたり、抜栓時にジュースが噴き出してしまう場合もあります。
味の里とうみでも熱処理をおすすめしています。
信州味の里とうみは創業から19年、一貫して地元の素材を生かした加工を専門にしています。
自社製品としては、味噌、紫蘇ジュース、リンゴジュース、とうみタレ、ケチャップなどがあります。
昨年代表に就任した荻原祐子さんは「生産者さんが作った素材を大切に加工しています。 6次化するお手伝いを通じて生産者さんの収入増に貢献できるとうれしい。」「加工についての相談も遠慮なくしてほしい。」と話してくれました。
また加工担当の小林和子さんによると、収穫時期と加工時期にズレがある場合は冷凍で保存することもでき、量がまとまるまでお預かりすることも可能とのことです。
※写真は信州味の里とうみの商品。
児玉邸(東御市)では昨年初めてジュースを作りました。
この時は60本と少なかったので、ほとんどは自家用と友人用になったとのこと。
「ビンの再利用を目的にメルロー100%で作りました。収量に対しジュースは半分の量になりますが、その分糖度が28度と濃いので、炭酸やお湯で割ると美味しいです。」と児玉寧さん。
Sail the Ship Vineyardの田口さんも1年に約60本。
ワインと同じ販売店さんで販売してもらいました。
オリが多いのが課題とのことですが、お客様の反応は良かったそうです。
クレソンリバーサイドストーリー旧軽井沢では、フレンチ出身シェフの野菜たっぷりランチ・ディナーに合わせてのりんご/ぶどう100%のノンアルコールソーダを提供しています。
浅間農園で搾汁と炭酸を加える加工をしています。
東御ワインチャペル(東御市)店頭では、現在3種類のワイン用ぶどうのジュースを扱っています。
石原浩子さんにお店でのニーズをお聞きしました。
「カップルで来店され、お一人がアルコールを飲まれないお客様などにおすすめしています。同じぶどうから作られたワインとジュースでの乾杯というストーリーが魅力、味もナチュラル感が好評です。」
レストランの立場からの希望もあります。
「糖度が高いのでお料理とあわせづらいです。甘みが抑えられたものがあるとよりいいと思います。」「どれも生産量が少ないのですぐに売り切れてしまい、次のジュースを探す手間がかかります。ある程度量があると助かります。」
加工はあくまでもワイン用に使わないぶどうがある場合の選択肢ですが、着地型ツアーやワイナリーめぐりにはニーズのある商品と言えます。