【アムルナイレポート】地元の子どもたちが継続的にワインづくりに参加
「ワイン文化を未来へ繋ぐ会」―ジオヒルズワイナリー(小諸市)
ジオヒルズワイナリーは2021年3月、醸造責任者の富岡隼人さん自身が会長として「ワイン文化を未来へ繋ぐ会」を設立しました。
市民活動促進補助金を得て、地元の小学生と高校生にぶどうの栽培体験授業を提供するとともに、高校生はマーケティングまで携われるプロジェクトをスタートしました。
富岡さんは、ベトナムで5年間日本語を教えるボランティアに携わった後帰国、実家である小諸市内の老舗旅館中棚荘が経営するワイン用葡萄の栽培に従事する傍ら、千曲川ワインアカデミーを1期生として受講しました。
現在は醸造責任者として栽培、醸造とカフェの運営に携わっています。
富岡さんは「葡萄は栽培される土地の特徴が出るので、ワインづくりを通して、子どもたちが地元の土地について学び、葡萄栽培から農業を身近に感じてほしい」とプロジェクトの目的を話します。
「そのことが将来、農業をやりたいとか、ワインづくりが面白そう、デザインの仕事がやりたいといったビジョンを持つきっかけになるとうれしい」と抱負を語ってくれました。
活動の内容をご紹介します。
千曲小学校の3年生15名、野岸小学校のかしの木クラス4名、そして小諸商業高校の2年生 20名から成る混合チームを5つ作りました。
1チーム8名前後です。
〈主な作業〉
4月 ワインぶどうの苗250本を植栽
6月 育ち始めた樹の剪定作業
9月 ジオヒルズワイナリーの畑のぶどうの収穫
10月 醸造作業の体験
11月 ラベルデザインの作成・プレゼン
以上の作業の成果として、今年4月には赤ワイン(メルロー)100本、白ワイン(シャルドネ)100本をリリースします。
子どもたちの保護者や学校関係者に先行販売し、残りは一般の方に販売を予定しています。
混合グループで活動したことで、高校生が小学生の面倒を見たり、6月に行われた2回目の作業では再会を喜ぶ姿があり、夏休みには家族といっしょに畑を訪れた子もいるなど、心温まるストーリーがたくさんありました。
ワインづくりは農業からスタートし、収穫したぶどうをワインに加工(醸造)し、販売する、というように1次産業→2次産業→3次産業すべてに生産者が携わる6次産業化の典型例です。
「全国的にも農業離れが問題になっている今、自分で育てたものを自分で加工して販売まで行う6次産業を通して、子どもたちには農業にも興味を持ってもらいたいです」と富岡さん。
※6次産業化:2011年3月安倍内閣の時に「6次産業化法」が施行されました。
1次産業としての農林漁業と、2次産業としての製造業、3次産業としての小売業等の事業との総合的かつ一体的な推進を図り、農山漁村の豊かな地域資源を活用した新たな付加価値を生み出す取組です。
これにより農山漁村の所得の向上や雇用の確保を目指しています。
(1次×2次×3次=6次)
エチケットデザインと販売に関わるマーケティングは、小諸商業高校の「広告と販売促進」の授業で行いました。
「どういう人にいくらで売りたいか」などマーケティングの領域について学び、エチケットのデザインはプロのデザイナーが指導して、最終的に仕上げるところまでやりました。
デザインを担当したのは、上田市を拠点に活動する水野図案室アートディレクターの水野佳史さん。
いっしょに授業を受けた富岡さんは、「デザイン=絵、ではないんですね。空間全体を考えることがデザインなのだと知りました。」また「今回使われるデザインは生徒のアイデアを水野さんが仕上げましたが、今後は生徒が実際に描いたものを使っていきたいと、水野さんと話しています。」と第二弾以降の展望を話されました。
「ワイン文化を未来へ繋ぐ会」の活動を始めた背景には、前述のような若者の農業離れの他に、ワイン需要の伸び悩みがあると富岡さんは言います。
「日本ワインへの注目度は高まりつつありますが、地元のワイン消費はそれほど増えていません。なんとなく敷居が高いと感じられているように思います。子どもを通じてワインづくりを身近に感じてもらい、ワインを飲むきっかけになるといいと思います。」そのためにも、単発の取り組みで終わらせることなく、毎年新しいメンバーでワインづくりの体験授業を継続していくとのことでした。
「ワイン文化を未来へ繋ぐ会」について:https://giohills.jp/blog/235/
360度大パノラマが魅力のジオヒルズワイナリーは、平日テレワークやワークショップの開催もできます。
2時間3,000円でカフェ・スペースを利用できますので、グループで使えばとてもリーズナブル。
コーヒーやシードル、ワインを注文して飲むこともできますし、予約すればベトナムランチも楽しめます。
申し込みはメールか電話またはLINEの公式アカウントから。
Mail:mimaki@giohills.jp
TEL:0267-48-6422(土・日・祝10:00~16:00)
最後にジオヒルズワイナリーのリリース・スケジュールについてうかがいました。
現在は100%自社畑のぶどうを使ったミマキ・シャルドネ2020を販売中。
2月11日に同じく自社畑のミマキ・メルロー2020がリリースされました。
初めての長期熟成商品です。
4月には白ぶどう2種混醸のワインを新たにリリース予定です。
更に7月にはカム・オン・メルロー2021、カム・オン・シャルドネ2021をリリース予定
いずれも酒販店、ECサイトで購入できます。
富岡さんは、「御牧ヶ原のぶどうの個性を生かしたワインをこれからも作っていきたい」と、土地の恵みに感謝して地元に貢献する、持続可能なワインづくりの未来を目指しています。
HP/ECサイト:https://giohills.jp
Facebook:https://www.facebook.com/giohills/