【生産者紹介】御牧原の台地に広がるヴィンヤード
2022年初リリース予定Plateau de MIMAKI池田淳一さん(佐久市)
【ロケーション】
千曲川の左岸、佐久市望月の御牧原台地の北西端、標高720mに池田淳一さんの圃場「Plateau de MIMAKI」があります。
「御牧の台地」を意味するこの圃場、北側の松林からは150mで東御市に近接し、南西に開けた景色の中には鹿曲川を挟んで八重原や立科のワイン生産者さん達の畑位置も一望できます。
写真で池田さんが手を差し伸べている西の方向には496ワイナリー(シクロヴィンヤード)とカラリアヴィンヤードがあるそうです。
【早期退職→アカデミー→開墾】
元々お酒好きでワイナリー巡りも楽しんでいた池田さんは、エンジニアとして勤めていた地元企業を早期退職後、2015年千曲川ワインアカデミー(以下アカデミー)を1期生として受講。
2016年から開墾と一部定植をスタート、現在約1.2haの圃場を管理しています。
義父の畑周辺の耕作放棄地を見て「何かしたい」というかねてからの思いを、6次産業化(1次産業×2次産業×3次産業)であるワインづくりに繋げました。
圃場はその後周辺に広げ、10人ほどの方から土地を借りて開墾、定植を徐々に広げていきました。
西向き斜面で風通しが良いことは栽培に好適ですが、強粘土質の再生地であり根張りと成長が遅く、収量は想定よりかなり少ない立ち上がり状況とのことです。
【初リリース】
2020年収穫分から委託醸造を開始し、2022年に初リリースを予定しています。
白ワインはシャルドネ、赤ワインはアルモノワールとメルローの混醸、2種類合わせて約600本を販売準備中です。
栽培している品種はシャルドネ、メルロー、カベルネ・ソーヴィニヨン、カベルネ・フラン、ピノグリ、アルモノワール、ソーヴィニヨンブラン。
「和食に合うやさしい味わいのあるワインを作りたい」と考えている池田さんの選択です。
初リリース分は地域限定での販売予定ですが、2021年ヴィンテージ(2023年リリース)分は1,500本を見込んでおり、現在アルカンヴィーニュでアルコール醗酵を終え、熟成中です。
【環境にやさしい農業=自然との闘い】
池田さんは就農当初の2年間、幼木期栽培の傍ら、趣味と実益を兼ねて、湯の丸高原で高山植物保護指導員として国有林管理のサポートに携わりました。
森林や植物など自然環境に関わる中で、農業者は「自然と調和すること」「環境に負荷をかけないこと」が大切だと考えてきました。
その一つが畑の支柱すべてに間伐材のカラマツ木杭を使っていることです。
「人にはオススメしません。打ち込むのがかなり重労働でたいへんすぎます。それに5~10年で朽ちますので、打ち直しが必要です」と池田さん。
またこの圃場は虫害と獣害が厳しく、クマ以外のほとんどの動物が出没します。
春先はシカが新芽を食べに、秋はタヌキやハクビシンが熟した実を狙って現れます。
電柵を編み込んだネットを通年張り、時期によって獣に対応する高さを変えることで防いでいます。
「もしこのネットを張らなかったら、まちがいなくすべて食べ尽くされます」と池田さん。
「自然を大切にすること」とはすなわち「自然と共存すること」ですが、これらの両立は難しい課題でもあります。
【千曲川左岸のこれからに期待】
千曲川ワインバレーでのワインづくりは従来右岸エリアが先行していましたが、近年は左岸エリアも盛り上がってきています。
小諸市のジオヒルズワイナリー、シクロヴィンヤード(現496ワイナリー)、上田市のシャトー・メルシャン椀子ワイナリー、立科町はたてしなップルの他約10人が、また望月町では3人がワイン用ぶどうの栽培をしています。
食においても、チーズのボスケソ(是元健介さん)、生ハムのジャンボン・ド・ヒメキ(藤原伸彦さん)、食の達人「職人館」(北沢正和さん)など役者がそろってきました。
佐久市は今年11月30日に千曲川ワインバレー(東地区)特区への加入が認定されました。
佐久市の生産者も市町村をまたいで区域内の原料を利用、委託醸造が可能になります。
また特区協のイベント範囲が広がり、プロモーションの内容も充実することが期待できます。
記事:http://www.city.saku.nagano.jp/machizukuri/nogyo/sangyo/winetokku/002720211203084202603.html
池田さんは「ワインの愛飲者が期待ほどに増えていないように感じます。広域での地域ブランディング、販売に結びつくプロモーションを期待します」と言います。
地方回帰や農を軸にしたライフスタイルの動向を感じながら事業化していく計画とのことで、ワイナリーも視野に入れた今後に期待が高まります。