【生産者紹介】永遠の「明日こそは」の想いを込めたトゥモローワイン
田村稔さん(上田市)
京都で2軒の焼肉店を経営する田村稔さん。
2016年開墾を始めて以来、ほぼ毎週上田と京都を往復しています。
週末は京都に戻ることを家族と約束しており、片道約5時間の距離を愛用の軽トラで走ります。
11月初旬、上田市生田尾野山地区にある収穫の終わった圃場に田村さんを訪ねました。
田村さんの圃場から見渡す景色はとても雄大です。
それもそのはず、景観の良さが評判の信州国際音楽村からさらに車で5分ほど登ったところにあるのです。
アルカンヴィーニュ、ヴィラデストから北アルプスまで一望できる大パノラマに息を呑みます。
御堂のぶどう団地もはっきりと見えました。
「ここでの仕事は本当に楽しいんですよ」と田村さん。
里山の住宅地から見上げる丘の上、標高約650mに「落柿」「崖」などと名付けた畑が広がります。
畑全体が見渡せる、まとまった居心地のいいヴィンヤードです。
田村さんのワインづくりには揺るぎないこだわりがあります。
殺虫剤、除草剤、化学農薬を使わず、尾野山地区のあるがままをぶどうに反映させるため、雑草もすべては刈り取らない「草生栽培」です。
虫も駆除せずに食物連鎖による天敵づくりをしています。
土中生物の働きを尊重した土づくりにより、畑の地面はふかふかと柔らかさを感じます。
ベト病や灰カビ病、晩腐病対策のため、ぶどうの房ひとつひとつに傘かけをしています。
発酵は野生酵母で行います。
尾野山の畑に住む自然の酵母だからこそ、この土地の気候や環境をワインに反映させられると田村さんは考えています。
栽培している品種は「お肉に合う、渋味のあるしっかりしたワイン」をイメージした、メルロー、カベルネソーヴィニヨン、カベルネフラン、ソーヴィニヨンブラン、シャルドネ、ピノグリ、更に今年プチマンサンを植栽しました。
初リリースは2019年にメルロー。
2020年、2021年にはオノヤマビッキ・ルージュとオノヤマビッキ・ブランをリリースしました。
2020年はベト病などの影響で収穫量が今ひとつ増えませんでしたが、今年2021年のヴィンテージは約3,000本のリリースが見込まれています。
※ビッキ=かえる、アイヌ語が語源ですが、田村さんの故郷山形でもこう呼びます。
2020、2021年の2年間は赤・白2種合計約1,500~1,600本のリリースで、京都のお店と地元の飲食店、酒販店、そして上田市周辺の2店舗で完売しましたが、大幅に増える来年は販促活動も必要になると考えています。
田村さん自身が焼肉店を経営している経験から、飲食店の状況や気持ちがよくわかるので、できるだけ直接営業して飲食店への卸を増やしたい意向です。
「肉料理に合うワイン」はもちろんですが、今田村さんがイメージをお聞きしたところ、「お料理に寄り添いながらも邪魔しない自然なものがいいと考えています」と田村さん。
Tomorrow Wineオノヤマビッキのエチケットはカマキリ、ヤモリ、蝶、そしてセンターには大鷹のシルエットが描かれ、とてもほのぼのした印象です。
このイラストは学生の頃から絵心があったという田村さんご自身によるもの、畑周辺に現れる、または住んでいるらしい生き物を描いたものです。
トゥモローワインの影の応援団のようにも感じられ、尾野山に対する田村さんの愛情が伝わってきます。
穏やかで明るい田村さんは「自分は人に恵まれている」と言います。
京都にある2店舗の焼肉店は奥様と長男がまかなってくれています。
畑作業は通常一人で行なっていますが、収穫時など人手が必要な時は、土地の所有者など地元の方々が手を貸してくれます。
2016年の開墾時に事故で骨盤を骨折した時も、地元の人が気づいてくれて命びろいをし、5月から3ヶ月に及んだ入院期間中は1期生の仲間が畑を管理してくれました。
「みんなも自分の作業で忙しい時に申しわけなく、本当に有り難かった」と振り返ります。
2年後の2023年には畑の近くにワイナリーを建設する予定です。
「完熟した時に収穫して、ベストな状態で仕込みをしたい」と田村さん。
今後の展開も楽しみです。
トゥモローワインの販売店(東信地域):東御ワインチャペル、岩井屋酒店
ワインとお肉と野菜の店Daisetsu「大拙」:https://sp.dai-setsu.com