【生産者紹介】今年7月に初リリースした
Signature K(シグニチャーK)田中啓さん(長野市)
【ソムリエ~自社ワインの初リリース】
長野市信更(しんこう)町高野の圃場で収穫したシャルドネとピノ・ノワールから、2020ヴィンテージ約300本を今年7月にリリースしました。
前職の仲間やお客さま、長野県内の酒店などで、すぐに完売となりました。
田中啓さんは現在41歳。
星野リゾート軽井沢ホテルブレストンコートで2年、ザ・リッツ・カールトン東京で2年、そしてワイングロッサリー社(京都)で5年半ソムリエとしてキャリアを積んだ後、2016年千曲川ワインアカデミー(以下アカデミー)の2期生として学びました。
ブレストンコート時代に先輩の影響でワインに興味を持ち、飲ませてもらったブルゴーニュのTruchot(トルショー)のピノ・ノワールが、ソムリエになるきっかけでした。
「とにかく、美味しくてカルチャーショックでした。」(田中さん)
2015年まで勤めたワイングロッサリー社には、ワインショップ、ワインバー、卸部門がありますが、今も多くのお客さまとつながっています。
初リリースしたワインの半分は、京都のお客さまの購入でした。
【ブルゴーニュのワイン】
ワインづくりにおいても、イメージしているのはブルゴーニュのワインです。
ブルゴーニュのワインとは:「シンプル、繊細、色が薄く香りがいい、単一品種のぶどうで作るワイン。いろいろな顔を持っていて、開栓後も複雑な味わいがあって、変化が楽しめる。ピノ・ノワールはほかのぶどうとちがって特別。」と田中さんは語ります。
現在は信更町高野ではピノ・ノワールを試験的に少量栽培していますが、これから居住地である篠ノ井近郊(標高650m)に本格的に植栽する予定とのことです。
【現在の圃場は信更町高野】
信更町高野は長野市内ではありますが、篠ノ井から約30分、田んぼやそばの畑を見ながら上っていくと、立派な家が多い高野の集落が見てきます。
ほかの村同様、過疎が進んでいて、これからの村のあり方が課題となっています。
田中さんは篠ノ井の自宅から毎日この村に通っていますが、古民家を畑作業やイベントの休憩所として、使わせてもらっています。
「ワインぶどうの産地として訪ねてきてもらえるようにしたい」と、同地でワインぶどう栽培をしている仲間と話しています。
2020年には、仲間の柴田優伸さんがメルローワインを初リリースしました。
盆地のように見えるこの土地一帯は昔化石湖だったため、畑の土にミネラル分が豊富に含まれていることが特徴です。
ぶどう栽培にも適しています。
たった30分で訪れることができる山あいの静かな村は、ホッと息をつける空間です。
【ワインづくり修行】
アカデミーに2016年受講中から卒業後も、田中さんはほかでも実地研修をしてきました。
まずはカクトウ高山農場でぶどう栽培を、そして信州高山ワイナリーで醸造を現地で学びました。
勉強熱心な田中さんには、師匠と呼べる人との出会いもありました。
角藤農園の農場長を務められた佐藤宗一さんです。
1986年からシャトーメルシャンの契約農家として、高山村でぶどう栽培をスタート。
当初は国産品種の龍眼いわゆる善光寺ぶどうから、次第にヨーロッパ品種のシャルドネとピノ・ノワールに移行され、特にシャトーメルシャンに供給したシャルドネは、「北信シャルドネ」として2004年国産ワインコンクールで金賞を受賞。
高山村をワインぶどう産地として、知らしめるきっかけになりました。
田中さんの圃場から距離のある、中野市から足を運んで、熱心に指導してくださいました。
残念なことに今年の8月に突然亡くなられましたが、7月の初リリースの際は、1本目のSignature Kをいっしょに飲むことができました。
「大事な節目の時を共有できたことは、本当によかった。」と田中さんは語っています。
佐藤宗一さんに関する記事:https://www.nagano-wine.jp/special/winery/26kakuto.html
【地元にワイナリーを】
一流レストランでの経験、ソムリエの経験を積んだ田中さんですから、「Signature Kをはじめとするワインを飲めるお店は、考えていらっしゃいますか。」と尋ねると、「来年2022年に篠ノ井にレストランおよび宿泊施設を兼ねたワイナリーを仲間と建設予定です。」と期待を裏切らない答えが返ってきました。
オーベルジュ&ワイナリーのネーミングが気になります。
長野市は現在ワイン特区ではないため、田中さん単独での製造免許取得が難しく、長野市内でワインづくりに励む4人の仲間の協力を得て、設立・運営する計画を進めています。
田中さんや仲間とワインづくりについて会話ができるお店、今から楽しみに待ちたいと思います。
来年のリリースはシャルドネ2,000本、ピノ・ノワール500本を見込んでいます。
念願のピノ・ノワール初リリースも楽しみです。
田中さんのFacebook:https://www.facebook.com/kei.tanaka.52