【生産者紹介】今年9月ワイナリーが完成します
ドメーヌ・フジタ 藤田正人さん(小諸市)
今年9月のワイナリー完成を待つ、藤田正人さんは千曲川ワインアカデミー1期生。
今年収穫するぶどうは自社のワイナリーで醸造する予定です。
取材に訪れた日も、設計士さんや施工業者さんなど、雨天にもかかわらず大勢の人が出入りしていました。
「なんとしても、今年の収穫に間に合わせる」そんな意気込みを感じました。
いつお会いしても、穏やかでひょうひょうとした藤田さんですが、お話をうかがうと、とても緻密で、ご自身の感性を大切に、ペースを保って取り組んでいらっしゃると感じました。
想定外のことや自然の厳しさ、すべてをありのままに受け止めて、トラブルさえも楽しんでいるかのようです。
植栽時、希望する苗木がなく、選択の余地はなかったようですが、そんな時も「あるものを大事にしよう」と考え、対応されたようです。
圃場を探しているときのこと、小諸市役所の農林課職員に案内され、糠地のスケールの大きな景色を目にした瞬間、「Destiny! ここだ!」と感じたそうです。
御牧原台地、蓼科山・八ヶ岳、浅間連峰、穂高~槍ヶ岳の北アルプスが見渡せる、標高約880mの南斜面に、藤田さんの4つの圃場があります。
電信柱、電線、建物がほとんどない驚異的な景色が広がっています。
現在70歳。
「父親が85歳まで元気に農業をやっていたので、私もそのくらいまでは働けるかなと思っています。」今後の取り組みに関しても、ご自身のライフプランに沿っていると感じました。
神奈川県の県立高校で、地理など社会科の教師を30年つとめた藤田さんは、生きた授業をするために、教科書を飛び出し、巡った国は世界60ヵ国以上。
各国でワインに出会いましたが、特に心に響いたのが、フランス・ブルゴーニュでした。
ブルゴーニュのロマネ村でめぐり合った「小さな家族経営のドメーヌ(自らぶどう栽培から醸造、熟成、瓶詰め行う生産者)」に、自分の第二の人生の可能性を見出し、ワインづくりに残りの人生を賭ける決心をしました。
タイミングよく、2015年に「千曲川ワインアカデミー」が開校となり、1期生として受講しました。
旅での出会いなど、小諸市役所農林課のブログに詳しく紹介されています。
https://komoro-city.note.jp/n/n2da5a797f6df
ブルゴーニュのドメーヌを目指した藤田さんのワインづくりですが、その特徴をうかがいました。
―テロワールを重視したぶどう&ワインづくり。
―自分の圃場からとれたぶどうだけを原材料にする。単一品種で混醸をしない。
―可能な限り補糖しない、補酸しない。
「ブルゴーニュと同じワインはつくれませんが、小諸には小諸のテロワールを活かした、和食に合うワインができるのではないかと考えています」と藤田さん。
3年目となる今年はワイン5種をリリースしました。
- ・「日向山ピノノワール2020」(樽)日向山圃場6年目。テールドシエルで自然酵母、無濾過。ドメーヌ・フジタのフラッグシップワイン。
- ・「ゲッタピノノワール2020」(ステンレスタンク)井出圃場4年目。
- ・「井子シャルドネ2020」(樽)かけこば圃場6年目。テールドシエルで自然酵母、無濾過。
- ・「井子シャルドネ2020」(ステンレスタンク)かけこば圃場6年目。
- ・「清水端ソーヴィニヨンブラン」(ステンレスタンク)清水端圃場3年目の収穫。MLF製法
いずれも補糖、補酸せずに醸造されました。
以下のリンクにリリースしたワインについて、醸造過程で考慮したことなど詳細が紹介されています。
ドメーヌ・フジタ商品紹介:http://nukajiggfarm.com/custom.html
藤田さんの圃場で、葉っぱにたたずむカエルの写真を撮っていると、「お、カエルですね。こんなところにもいましたか、虫を食べてくれるんです。」と、ご自身には日常的な光景にもかかわらず、楽しそうに反応される藤田さんが印象的でした。
藤田さんは美しいブルゴーニュの風景を目標にしており、仲間といっしょに小諸を銘醸地にしたいという夢を持っています。
ワインづくりは、ぶどう栽培という農業をベースとした6次産業ですが、「農家」に加えて、科学者(サイエンス)の側面と、芸術家(アート)の側面、さらに「経営」と多面的な要素があり、それが面白いとおっしゃいます。
1年目2019年にリリースしたワインは465本、2年目の2020年が860本、今年は約2,460本と順調に増えてきました。
生産量の増大に伴い、販路の拡大、つまり営業や会社の経営そのものが重要になっていきます。
以下のリンクにドメーヌ・フジタのワインが飲める店、購入できる店のリストがありますが、地元小諸市をはじめとし、軽井沢、そして東京の酒販店、レストラン等数多くあります。
東京や軽井沢のレストランでも好評で、現在軽井沢プリンスホテルウェスト、プリムローズの試飲セット「デギュスタシオンセット」で提供されています。
東京のレストランからのリピートも多いとのこと。
取扱店を増やせているのは、二拠点(東京と小諸)生活のメリットでもありますが、藤田さんは積極的に営業活動をしています。
奥さまとふたりで、今年リリースされた5本と、昨年の「日向山ピノノワール2019」を加えた6本を持参し、コラヴァンを装備して酒店やレストランを訪問します。
試飲を通じた販売促進の結果、取扱店を増やしています。
「東京の下町にこんなワインレストランがありますよ」と話すと、早速メモして営業先候補にリストアップされました。
「マルシェにも出たい、直接オススメして、お客さんとお話ができるのはとても楽しい」と対面販売にも積極的でした。
今年の収穫に際しては、作業ボランティアを募集しているとのことですが、この景色を見ながらの作業は、参加者にとっても魅力的な経験となりそうです。
「SNSは好きではないんです」という藤田さんのワイン情報は、ブログもあるWebサイトでご覧いただけます。
ドメーヌ・フジタWebサイト:http://nukajiggfarm.com/index.html