【生産者紹介】農花(nouhana)ヴィンヤード初リリースDODO PETNAT
岡本なるみさん(小諸市糠地)
千曲川ワインアカデミー2期生の岡本さんが先月5月にワインを初リリース、本数は287本と少なく、現在は完売していますが、今なら東御ワインチャペルと小諸のAOKUBIで飲むことができます。
DODO Pet Nat2020
Pet Nat(Petillan Naturel=ペティヤン・ナチュール)微発泡のワインです。
DODOは野生酵母のみで発酵、無添加、無濾過、岡本さん宅のすぐ近くのワイナリー、テールドシエルで醸造されました。
ぶどう品種は、自社畑のミューラトュルガウ、シャルドネ、ソーヴィニヨンブラン、ゲベルツトラミネール、ピノグリなどの白ぶどうをフィールドブレンド(混醸)し、カベルネフランの醪(もろみ)を加え、美しいサーモンピンクのペティヤンとなりました。
畑に植えられているさまざまな品種のぶどうは、購入した苗のほかに、ワインブドウの苗が手に入りにくかった5年前、岡本さんが小諸市に畑と家が見つかるまでの間に、自宅のある東京の貸農園で育てていた苗もあります。
テールドシエルの醸造責任者である桒原一斗(クワバラカズト)さんが、そんな少量多品種の岡本さんの畑を観察しながら、熟期の違うブドウの収穫・仕込みのタイミングを主導し、丁寧に醸造しました。
発酵の過程で「ペティヤンにしましょう」「カベルネフランを加えましょう」と状況に応じて判断し、初リリースのワインはサーモンピンクのペティヤンとして完成しました。
桒原さんが常々唱えている「ぶどうがなりたいワインを作る」を実体験しました、と岡本さん。
同様にテールドシエルで仕込まれたカベルネフラン×メルローのフィールドブレンドが今秋300本と少量ですがリリースを予定しています。
今回のエチケットは岡本さんご自身が20代の時に描いたDODO(ドードー、絶滅してしまった飛べない鳥)です。
愚直に丁寧にワインを作っていきたいという気持ちの象徴だそうです。オリジナリティとストーリーも素敵です。
東京出身の岡本さんが、なぜ小諸でワインを作っているのか、気になるところです。
大手出版社で、週刊誌のワイン連載のデスクをしていたとき、玉村豊男さんが東御市にワインづくりの学校を設立すると知ったことが、元々植物が好きでお酒づくりに興味があった岡本さんを早期退職~ぶどう栽培~ワインづくりの道に導きました。
栃木県出身のお母さまがグリーンサム(green thumb)、いわゆる植物の世話がお好きで、東京でも庭に小さなぶどう棚をつくったり、数多くの植物を育てていたりしたそうです。
お母さまの影響で岡本さん自身も、アパートのベランダやマンション小さな庭で草花を育てていましたが、「いつかは土っぽい生活がしたい」と思っていたそうです。
入社以来24年間、ほとんどを雑誌作り、本づくりに関わってきましたが、時に出版界は紙媒体から電子書籍やWEBでの発信の時代に移行しつつあり、メディア人として、新たにデジタル分野で挑戦を続けるのか、選択を迫られる時代になりつつありました。
バブル組として会社でもそろそろ重い存在になっている自覚もあり、会社の早期退職者募集に応募してのワイン作りを決意したのだそうです。
現在でも編集者の経験から大学でメディア産業論の講師を務め、日本ブドウ栽培協会(JVA鹿取みゆき代表理事)でも広報担当の理事として活躍しています。
「2拠点生活のなかでできること」
第二のキャリアとしての農業だったので、人や環境に負荷のない農業を目指したいと考え、試行錯誤しています。
今実践しているのは、「減農薬」「不耕起(耕さない)」「無施肥」の3つだそうです。
このインタビューよりも後になる5月30日に農花のWebサイトに現在の取り組みについて詳しく記載されています。
https://nouhana.com/free/vineyard2
強い粘土質で、晴天が続くとカチカチになる土地に、窒素固定効果のあるシロツメクサ、ヘアリーベッチなどマメ科のタネを撒いて下草を増やしてきました。
自然に生えてくるタンポポやギシギシなど根の深い草は、かえって畑の土を豊かにしてくれるのではないかと考えています。
岡本さん曰く「手を入れすぎず、元の状態に戻しているんです」放置と手を掛けるの加減を探りながら進めているとのだそうです。
「家族のいる東京と小諸の行ったり来たりなので、できることをやっている感じです。小さな畑ですが、今のところこの広さが限界かと思っています」。
「できるだけ合わせて、なるべく逆らわない」
フランスの造園家ジル・クレマン氏の言葉を大切にしているそうです。
クレマン氏の著書には「庭師と旅人」「動いている庭」などがあります。
「地球全体を一つの庭と見る」と考え、地球の「多様性」を何よりも大切にする庭師としての姿勢を尊敬しているそうです。
自家製ワインが楽しめる山里のお家
植物をこよなく愛する岡本さんにとって、築40年ほどの民家を改装した小諸の家は、お母さまが植物を植えていた実家への想いがあるそうです。
「いつか、裏庭に露天風呂と東屋を作って、家族やこれまで出会った人たちと手作りのワインを飲みながらゆっくり過ごしたい。」とビジョンを語ってくれました。
究極の目標は、ハウスワイン特区の指定を受け、自分で少量のガレージワインを造って訪れた人にふるまうこと。
ハウスワイン特区は、どぶろく特区と同様、少量の(最小醸造量がない)ワインを作り、ボトル売りはできないが、農家民宿や農家レストランなどの形で飲んでもらうことができます。
アカデミー卒業生では、大町市でうさうさのワイナリーの中村智恵美さんが実践しています。
ジョージアのワインづくりを描き、2019年に日本でも公開された映画「ジョージア、ワインが生まれたところ」にそのイメージがあります。
家庭で素焼きの甕にブドウを入れ、神に祈りを捧げて土の中で醸します。
それを家族で集い、飲み、歌う暮らしが描かれています。
映画『ジョージア、ワインが生まれたところ』公式サイト(uplink.co.jp):
https://www.uplink.co.jp/ourbloodiswine/
フラワーアレンジメントも自分で制作し、生活に取り入れている岡本さんの「理想の家」が、景色に恵まれた糠地に完成するのが楽しみです。
東京での花とワインの展示・販売会も盛り上がりそうです。
今年秋には白ぶどうのケルナー、バッカスも収穫予定、白ワインまたはペティヤンになるそうなので、今年DODO2020を飲めなかった皆さん、来年を楽しみに待ちましょう。
農花(nouhana)webサイト:https://nouhana.com