《コロナ禍での小諸版ウエルネスシティ》
小泉俊博小諸市長が、2期目の基本政策に『小諸版ウエルネスシティ』を掲げたのが、昨年4月の市長選前の年明け早々でした。
まだコロナ禍が発生する前で、「ウエルネス」という言葉に耳慣れてない市民や職員からは、当初理解がしにくいという反応があったようです。
2年越しのコロナ禍でさまざまな経験を積んで、最近では、単に健幸都市では表しきれない意味があると理解するひとが、増えつつあります。
新型コロナウイルスの感染拡大により、日本社会の基本であった《3密》が否定され、感染予防対策や、人流を減らすことを余儀なくされる日々を、私たちは経験しています。
今までの人間社会の基本が崩れる中で、さまざまな弊害とともに、新たな変化も生じてきました。
長い間続いた大都市への一極集中も、昨年からその傾向が一変し、脱東京という考えられない社会現象を引き起こしています。
人流を減らすためのリモートワークを国や自治体が推奨したり、技術革新が進み、通勤しなくてもテレワークで仕事がカバーできる領域が広がり、働き方改革にも拍車がかかりました。
同時に3密回避の面では、大都市の脆弱性が顕在化しました。
リモートワークの普及は、ライフスタイルやワークスタイルの変革を促し、首都圏でも都心から近隣県やリゾートエリアへの移住が、急速に増加しました。
軽井沢でもワーケーション施設がリゾートホテルを含め急増しています。
『ウエルネス』を端的に表せば、《健康をベースに、よりよく生きるためのライフスタイルのあり方》です。
小泉市長は、市の幹部・職員はもちろん、市民や市議会でも繰り返し繰り返し、このビジョンを説明し、理解を求めてきました。
2月1日には、日経地方創生フォーラム《地方創生~アフターコロナの新しい形~》で『小諸版ウエルネスシティ~小諸からはじまる地方の時代~』と題して基調講演されました。
オンライン開催であったため、全国の自治体からの反響も大きかったようです。
《小諸市への外部投資が増加》
小泉市長が「小諸版ウエルネスシティ」を掲げてから、小諸市への外部からの投資が顕著になってきました。
昨年末には無添加化粧品「HABA社」の小諸工場が竣工し、「軽井沢蒸留酒製造社」が、松井地区にシングルモルトウイスキーの蒸溜所とビジターセンターの来春竣工を発表。
今年に入り、5月8日には、ITベンチャーのBTM社が、小諸駅前に「イノベーションハブこもろラボ」を7月オープンすると発表。
ラボでのITエンジニア養成スクールの生徒募集も開始しました。
そして5月12日には、千曲川ワイン倶楽部(以下CWC)法人会員カクイチ社、小諸市、事業構想大学院大学の3者による、産官学連携「まちづくり包括連携協定」が締結されました。
企業版ふるさと納税制度が導入され、第一号としてカクイチ社が市に5,000万円寄附しました。
3者によるコラボで、MaaS事業と、農業振興事業のふたつのテーマに取り組みます。
小諸市が目指す「多極ネットワーク型コンパクトシティ構想」実現に向けて、市民の足となるMaaS事業は、8月から実証実験が開始され、今回の寄附はその財源となります。
このMaaS事業については、昨年1 0月より、カクイチ社が自社工場のある東御市で、半年間実証実験を行いました。
隣接する小諸市の場合は、企業版ふるさと納税と絡め、実証実験の財源を確保した上で、次年度の本格実施を目指します。
このMaaSプロジェクトには、すでにアプリケーション開発に、CWC法人会員のMinoriソリューションズ社も参加しています。
※MaaSとは:Mobility as a Serviceの略
情報技術を活用して各種交通手段を仮想的に繋ぐサービス。
公共交通とそれ以外の様々な交通手段を、運営主体の違いを超えて1つの移動支援サービスとして提供する新たな移動の概念です。
利用者がスマートフォンの専用アプリを用いて、必要な時にいつでも最適な交通手段やルートを検索し、利用し、アプリを通じて運賃等の決済を行うといった利用方法が想定されています。
現在市内の旧北国街道沿いには、移住者によるビストロ アオクビ(本町)やイタリアンレストラン チッタ・スロー(与良町)が開業。
CWC法人会員フォンス社小山正社長は、本年2月より市内老舗味噌メーカー信州味噌社社長に就任しました。
早速新たな食材店舗を、東京恵比寿店と同時に、旧北国街道荒町に今夏開店予定です。
さらに小諸市に焙煎工場がある、丸山珈琲社で腕を磨き、3度日本一になったサイフォニストが、サイホンコーヒーカフェ「彩本堂」を6月から荒町にオープンするなど、市街地に賑わいを取り戻す、話題性のある新店舗の開設が続いています。
それを支えているのは、〈小諸の町並みを守りたい〉市の職員や商店街の商店主、地元ケーブルテレビのキャスターたちで構成する地元民間団体『おしゃれ田舎プロジェクト』です。
古民家再生の設計施工企業2社と、〈小諸の町なかをよみがえらせる〉ことを目的に連携しています。
小諸駅前「停車場ガーデン」を運営する「NPO法人小諸の杜」や、「信州小諸城下町フェスタ」や歴史的建造物の再生に取り組む、「NPO法人小諸町並み研究会」は、市外の人たちと知の交流をする「まちづくりワークショップ」を積極的に開催し、オープンな地域イノベーションの環境づくりに尽力しています。
従来バラバラだったまちづくり活動が、小泉市長の「小諸版ウエルネスシティ」のビジョンのもとで、ようやくつながり始めた感があります。
《高齢者向けワクチン接種への取り組み》
コンパクトシティの中核となる、厚生連浅間南麓こもろ医療センター、小諸市役所、そして8月22日プレオープン、10月グランドオープンとなる複合型中心拠点誘導施設「こもテラス」。
町の中心部に主要な社会機能がコンパクトにまとまり、周辺地域からの市民の誘導を、MaaSによりスムーズに行う。
そして市街地も、移住者を中心に再生事業を活発化して賑わいを復活させる。
これが『多極ネットワーク型コンパクトシティ構想』です。
小諸市では、今回の高齢者向けワクチン接種は、他の自治体とは異なり、予約の混乱を回避するために、市があらかじめ日時を指定し、接種券を市民に送付し、不都合のケースのみコールセンターで日程の再調整といった、市民に不安を与えない、実に市民サイドに立った接種を実施中です。
そして集団接種会場となる市庁舎隣りの市民交流センターまでは、無料バスで送迎するという「小諸モデル」を採用しました。
この送迎の一部には、MaaS事業で使われるEVバスも、市民の認知度を上げるために6月より運行されます。
小泉市長のウエルネスシティへの想いが、職員を揺り起した結果だと思います。
そして坂のまち小諸では、4月16日から5月29日まで、毎週金土の10:00~16:00にカクイチ社が提供する、グリスロと呼ばれる低速スマートカート「愛称EGG」で、市内の周回する実証実験を行いました。
市民や旅行者の利用も多く大好評で、特にシニア層にとっては、坂のまちのハンデをカバーする、有効な公共交通手段となりそうです。
昨年11月小泉市長より「政策アドバイザー」を委嘱された私は、アフターコロナ時代に向けたヒントをいくつか提供してきました。
小泉市長は自ら時代を読み取り、新たなビジョンを掲げ、自分の言葉で、そしてご自身でつくられたドキュメントで幹部や職員に伝え、対話を繰り返し、理解を深めています。
今回の高齢者向けワクチン接種の「小諸モデル」は、小泉市長の意を汲んだ職員たちによる、市民に寄り添った素晴らしい取り組みであり、見事にビジョンが具現化されました。
《小諸のワイナリーと軽井沢リゾート企業とのコラボ》
昨年来CWCは、「千曲川ワインバレー特区連絡協議会(現会長:小泉小諸市長)」と、軽井沢と千曲川ワインバレーイーストエリアとの一体化に取り組んでいますが、最近軽井沢のリゾート企業と、小諸のワイナリーとのコラボ企画が増えてきました。
千曲川左岸御牧ヶ原地区のジオヒルズワイナリーと軽井沢プリンスホテルとのワイナリー貸切イベントや、千曲川右岸糠地地区テール・ド・シエルとエクシブ軽井沢とのコラボで、5月23日(日)糠地地区の「見晴らし交流館」広場にて、野外レストラン=ダイニングアウトが開催されました。
軽井沢にはない、眺望に優れたワイナリー&ヴィンヤード周辺でのワインと食のマリアージュに、軽井沢に滞在中のお客さまから、大変好評を博したようです。
もとより48年の歴史がある「プレミアムワイン・ソラリスの里」マンズワイン小諸ワイナリーは、以前より軽井沢のリゾート企業とは太いパイプがあります。
例年夏季は、軽井沢に滞在中のVIPが多数訪れることでも有名です。
軽井沢経済圏との一体化を進める小諸市のこうした動向には、いよいよ目が離せなくなってきました。
アルカンヴィーニュフォーラム「千曲川ワイン倶楽部」
代表 小山 眞一