【生産者紹介】Abbey’s Vines(北佐久郡立科町)
「自由に思いのままにワインを作りたい」元金融マン安孫子尚さん
ブティックワイナリーの集積地である東御市からクルマで約15分、八重原台地を越えたところに位置する立科町には、ヴィンヤードが増えつつあります。
2月初旬Abbey’s Vines(アビーズ ヴァインズ)安孫子尚さん(アカデミー2期生)を訪ねました。
立科町牛鹿地区は約30年前に農業構造改善地区として、山を切り崩し、農地化を進めました。
その結果、1面25aに区画された四角い田畑が見渡す限り広がる、スケールの大きい景色になっています。グリーンシーズンにまた見てみたい、そう感じました。
安孫子さんは今年900本のワインぶどうの苗を植える予定です。
それが完了すると植栽されたぶどうの木は合計4,000本、1.5haのヴィンヤードとなります。
昨年2020年に800本のファーストヴィンテージワインをリリースしました。
今年は約2,500本を予定しています。
「標高は約690m、日照時間が長く、昼夜の寒暖差も大きく、さらに強粘土質であることから、ワインに個性が出ます」。
このテロワールは、安孫子さんがこの土地でワインづくりをすることに決断した理由のひとつです。
そして会社の仲間であった伊澤貴久さん(アカデミー1期生)がそれ以前に立科町で栽培を始めていたことと、畑探しをしていた時の地元の方々との出会いや交流が決め手となりました。
立科町では2012年「ワインで町おこし」を目指し、立科町農業振興公社が荒廃地を耕し、ワインぶどう栽培を開始しました。
それがきっかけとなって、現在立科町はワイン栽培の規模が徐々に拡大しつつあり、評価の高いワインも出てきています。
そもそも安孫子さんが、早期退職をしてまでワインづくりをぶどう栽培から携わることになったのはなぜなのでしょう。
それは30代に約8年間勤務した香港での出会いがきっかけでした。
英国金融機関の香港支店長に招待された会員制クラブで、有名ワイン(シャトーマルゴー、シャトーロートシルト、シャトー・・・)を、ホストのうんちくとともに味わったことに端を発し、アメリカ、オーストラリア、南米など世界の著名なワインを飲みまくり(!)、実際にフランスのワイン産地に足を運んだりもしました。
そして最後は「ブルゴーニュのピノノワールが最高!」に行きついたのだそうです。
帰国後、海外の有名ワイナリーのワインのみならず、いろいろな日本ワインを飲む中で、ある日飲んだ小布施ワインに衝撃を受けたそうです。
そのことが飲み手から「自分のワインのつくり手になりたい」と考え始めるきっかけとなりました。
金融関係の仕事をしていた経験から、設備投資やワイナリー設立までの見通しなど、綿密な計画を立てることから始め、準備に約20年、十分時間をかけました。
目指すワインについて尋ねると、「ボルドーのワインは確かに美味しいけれど、個性の強いフランス料理のソースに合うのであって、地元で飲んでもらいたいから、焼き鳥など日本食に合うワインが作りたい!」と話されました。
昨年は高山村マザーバインズで委託醸造した800本を、初めてリリースしましたが、友人・知人、ボランティアの方々などで完売したそうです。
Abbey’s Vines 2019 Rouge(赤)は黒ぶどう100%ですが、ファーストビンテージなので、あえて品種名でなく「赤」としました。
Abbey’s Vines Blanc(白)は白ぶどう2種類の混醸にピノノワールを入れました。
ピノ・ノワールを加えたことが想定外に好評で、アロマ系の華やかさに加えて後半にはピノ・ノワールならではの重さが楽しめたそうです。
立科町には、Abbey’s Vinesをはじめ約10名のワイングローワーがすでに入植し、ワイナリーも、「たてしなップルワイナリー」が存在します。
広々した圃場、浅間山や蓼科山(たてしなやま)、北アルプスなどを見渡す広大な景色、周辺には白樺高原、蓼科高原があり、ホテルやペンション、別荘地、温泉にも恵まれています。
ウェルネス資源が豊富な立科町は、千曲川左岸のワイナリーツーリズムの拠点としての発展が期待されています。
Abbey’s Vines ホームページ:https://www.abbeys-vines.jp/