『コロナ禍での新年を迎えて』
コロナ禍に明け暮れた2020年。
昨年末から全国で第三波の感染が急拡大し、政府は1月8日に緊急事態宣言を再発令しました。
長野県は独自の6段階の感染警戒レベルを設定しておりましたが、今回は深刻で、1月11日軽井沢町・御代田町・佐久市に、1月6日の小諸市につづき感染警戒レベル5を発出しました。
軽井沢は昨年の大型連休時と同じように、観光客は減り臨時休業のお店が増え、また静かな町に戻りました。
感染拡大でしばらく緊張した状況が続きましたが、佐久広域圏の警戒レベルは、1月25日のレベル4からさらに1月28日にはレベル3まで下がりました。
一年延期された東京五輪は、3月までには開催するか否かの結論が出る模様です。
世界の感染拡大はとどまるところを知らずに猛威を振るっており、さらに感染速度が1.7倍の新型コロナウイルスの変異種が国内でも発見され、全く予断を許さない状況が続いています。
現在唯一の頼みの綱のワクチン接種時期も、ワクチン担当大臣が決まり2月後半から予定されておりますが、世界中でワクチン供給に遅れが生じており、新型コロナウイルスとの長い闘いは、今年も続きそうです。
さて、こうした厳しい環境が続く中でも、軽井沢と千曲川ワインバレーイーストエリアには新しい動きがあります。
【世界的ブレンダーが小諸でシングルモルト生産へ】
昨年12月12日記者発表されたのは、《軽井沢蒸溜酒製造社が、小諸蒸溜所を2022年春に設立し、2027年よりシングルモルトウイスキーを世界に向けてリリースし、輸出比率は60%を見込んでいる。
副社長兼マスターブレンダーを務めるのは、台湾の「カバラン」ウイスキーで、昨年春までマスターブレンダーを務めた張郁嵐(イアン・チャン)氏(45)である。
張氏は、「数々の賞を受賞し、この世界で知らない人はいない。
カバラン退社後の去就が注目されていた」という。
2015年ワールド・ウイスキー・アワード(WWA)で、ベストシングルモルトウイスキー受賞、2016年から2年連続でロンドンの品評会「IWSC」のウイスキープロデューサー・ザ・イヤーに輝くなど素晴らしい実績の持ち主である。
近年世界各地にたくさんのマイクロディスティラリー(小さな蒸溜所)が造られ、このかなりの数のコンサルタントとして関わったのがジム・スワン博士で、張氏は博士の薫陶を受けている。
カバランを10数年で、世界に知られる蒸溜所にしたのが張氏だったわけである。
彼が目指すフレーバーは、「リッチで、フルーティ、複雑なのにクリーン」だという。
世界的に人気なジャパニーズウイスキーは、個性的なスコットランドと違い、バランスの良さが特徴だという。
新蒸溜所は、来春竣工、最初の出荷は2027年で、年間10万リットル(原酒)程度の規模から始め、生産を増やしていく予定とのこと。
小諸市松井地区の標高910m、敷地1万平方メートル以上の敷地には、蒸溜所の他に、ショップ、バーなどを備えた施設、ウイスキー貯蔵庫を建設。
ウイスキーを本格的に学べるアカデミーも開き、年間10万人の来場を見込んでいる。》
本蒸溜所が建設される予定地は、浅間サンラインから菱野温泉方向に上ったところであり、以前ご紹介した『浅間ワインオーバル』(浅間サンラインと1,000m林道を楕円につなげた区域)内にあり、「テールドシエル」のある糠地地区の並びになります。
これで東御市の標高920mのアルカンヴィーニュの「千曲川ワインアカデミー」、標高910mの小諸蒸溜所の「ウイスキーアカデミー」と、未来の専門人材を育てる教育機関が、両市に揃うことになります。
マイクロワイナリーが集積する千曲川右岸に、新たな醸しのマイクロディスティラリー(蒸溜所)が誕生します。
さらに佐久市の日本酒蔵元戸塚酒造も、「軽井沢ウイスキー株式会社」を設立し、軽井沢町発地地区にウイスキー蒸溜所を今春着工すると、1月21日の信濃毎日新聞が報じました。
蒸溜所工場長には、旧メルシャン軽井沢ウイスキー蒸溜所(御代田町)の製造全般を統括した中里美行氏を招くと発表しました。
これにより、軽井沢と千曲川ワインバレーイーストエリアには、日本酒・ワイン・クラフトビール・ウイスキーと酒類の醸造所・蒸溜所が、全て揃うことになりました。
【「THE HIRAMATSU 軽井沢 御代田」が3月16日開業】
かねてより浅間サンラインの大浅間ゴルフクラブの近くに建設中だったレストラングループひらまつの《森のグラン・オーベルジュ》「THE HIRAMATSU軽井沢 御代田」の開業が、3月16日に決まりました。
6万平方メートルを超える敷地に、わずか37の客室というゆとりの設計で、ヴィラ9棟と本館28室からなります。
近年移住者が急増している人口約15,000人の御代田町の、小高い森の中に、《美食のためだけにすべての時間を使うことが許された、美食家たちの理想郷が誕生》と謳っています。
恵まれた自然体験、豊かな食体験、そして温泉・ボディケア、ヨガ、トレッキング等のアクティビティなど、グラン・オーベルジュであるとともに、『高品質ウエルネスホテル』でもあります。
玉村さんと『浅間サンラインを、《千曲川ワイン街道》にしよう』という夢が、ウイスキー小諸蒸溜所の開設も併せ、沿線の魅力が加わり、実現にまた一歩近づきました。
【ワーケーション/リゾートテレワーク施設が続々誕生】
コロナ禍の長期化に伴い、テレワークやリモートワークが一段と普及し、軽井沢町にも三菱地所社はじめリゾート企業のワーケーション施設が、続々誕生しています。
JR東日本社は、軽井沢駅に個室型ワークスペース「ステーションブース」を誕生させました。
同社は2023年までに、駅構内にオフィスやブース1,000カ所など、リモートワークが可能な環境の整備を進めるようです。
【コロナ禍でのウエルネスエリア元年に】
コロナ禍は、新しい働き方(ニューワークウエイ)と生き方(ニューライフスタイル)を支える環境整備を、一段と加速してきました。
昨秋ご報告した北佐久地域への移住希望者の急増や、その受け入れのための体験施設の充実に、各自治体は急速に取り組みを強めています。
第三波で深刻化している医療崩壊問題も、超高齢化社会へと進む日本では、団塊の世代の後期高齢化入りを来年に控え、ある程度予測されていたことであり、むしろコロナ禍が前倒しした感があります。
社会構造の変化への対応を、コロナ禍が急がせているとも解釈できます。
感染急拡大で話題になっている医療機関の役割分担による、医療崩壊の防止策などは、むしろ都会よりも地方の方が柔軟に対応可能で、すでに「松本モデル」が報道でも取り上げられています。
私も一昨年より軽井沢に定住し、地方から東京を見る習慣がついてきました。
コロナ禍により未だかつてない生活習慣を強いられている中で、東京の転出超が5ヶ月連続発生しており、脱東京の動きが顕著になってきました。
転出先は、現在は近隣県が半数以上のようです。
地方創生については、従来の一極集中から、脱東京という逆のトレンドを踏まえ、新たな価値創造により“選ばれるまち”への転換のチャンスが巡ってきているのだと、ポジティブに受け止めていくことが肝要だと考えています。
感染拡大でステイホームを強いられ、恵まれた文化芸術に触れる機会を失った大都会の生活と、大自然、温泉など癒しや醸しのウエルネス資源に富んだ地方でのそれとの違いを、今こそ捉え直す機会が訪れているのだと思います。
ちなみに軽井沢町の人口は、昨年3月より10月末までで434名増え、世帯数も210世帯増加しました。
リモートワークの普及や、学校設立などの影響が大きいようです。
今回取り上げた新しい動きは、大変示唆に富んでおり、この地域のポテンシャルの大きさを物語っております。
軽井沢と千曲川ワインバレーイーストエリアにとって、本年が『ウエルネスエリア元年』になるように、邁進したいと思います。
波乱に富んだ一年になると思いますが、どうか私たちの活動に、引き続きご支援賜りますよう、お願いいたします。
アルカンヴィーニュフォーラム
「千曲川ワイン倶楽部」
代表 小山 眞一