《第6期始動》
アルカンヴィーニュフォーラム千曲川ワイン倶楽部(以下CWC)は、10月より第6期を迎えました。
第5期までは、“ゆりかごワイナリー”であるアルカンヴィーニュの存続を支援する活動と、「千曲川ワインアカデミー」を卒業した生産者を、継続的にサポートする活動が中心でした。
皆さまのお力添えのお蔭で、アルカンヴィーニュの経営もアカデミーを卒業した生産者が増え、委託醸造事業も軌道に乗り、卒業生も圃場を確保してワインづくりに取り組む生産者が順調に増えてまいりました。
すでにワイナリーを開業した卒業生も5社となりました。
ただし今回のコロナ禍で、ワイン需要にもブレーキがかかり、ワイン販売に苦戦する生産者も増えております。
第6期からは、コロナ禍で急変する経済状況も勘案し、生産者が安定してワインを供給できる環境整備と基盤づくりを、CWC法人会員とともに取り組むことにしました。
下記の3点を中心に、活動してまいります。
① 地域で最もワイン需要が多い軽井沢と、供給サイドの千曲川ワインバレー東地区とのサプライチェーンの確立と、一体化による広域観光を実現する基盤整備。
② しなの鉄道沿線のワイナリー観光を進める上で共通課題である、二次交通の脆弱さをカバーする*MaaS事業の推進。
③ 千曲川流域/しなの鉄道沿線の地域連携を推進する既存の組織/団体と連帯し、統合推進組織実現ヘの道につなげる。
*MaaSとは)Mobility as a Serviceの略
情報技術 を活用して各種交通手段を仮想的に繋ぐサービス。
公共交通とそれ以外の様々な交通手段を、運営主体の違いを超えて1つの移動支援サービスとして提供する新たな移動の概念です。
利用者がスマートフォンの専用アプリを用いて、必要な時にいつでも最適な交通手段やルートを検索し、利用し、アプリを通じて運賃等の決済を行うといった利用方法が想定されています。
《3つのテーマに関する最近の動き》
① 広域ワイン特区8市町村で構成する「千曲川ワインバレー特区連絡協議会(以下特区協)」主催で、軽井沢プリンスホテル社、CWC法人会員のマンズワイン社とメルシャン社、ヴィラデストワイナリー社が協力して、10月31日から4日間、軽井沢で初めて、玉村豊男さんの基調講演とマスターソムリエ高野豊さんの講演会、「千曲川ワイン」の有料試飲会と直売会を実施しました。
軽井沢プリンスホテルと大手ワイナリーが協力して、コロナ禍で、ワイン販売に苦しむ小規模ワイナリー、生産者を救済するイベントでした。
新型コロナウイルスの感染拡大状況が流動的で、開催決定が一ヶ月前と準備期間が短く、告知も十分とは言えず、集客には課題を残しましたが、軽井沢と千曲川ワインバレー東地区をつなげる、初めての意義ある機会となりました。
同じく軽井沢では、星野リゾート社がトップシーズンの7月の土日に、特区協と千曲川ワイン会を企画しましたが、残念ながらコロナ禍で、実施できませんでした。
今年は厳しい環境下ではありましたが、軽井沢でこうした機会に恵まれたことは前進であり、来年以降に向けて、大きな励みになりました。
② CWC法人会員であるカクイチ社が、7月東御市と包括連携協定を結び、同社が保有するEVバス、EVカートによるMaaS事業の実証実験を、10月19日より開始しました。
同じくCWC法人会員のMinoriソリューションズ社も、このプロジェクトに、MaaSアプリケーションソフトでの支援に加わりました。
隣接する小諸市も、「多極ネットワーク型コンパクトシティ」実現に向けて、MaaS事業に積極的に取り組む姿勢を示しています。
③ 小諸市NPO法人「町並み研究会」主催の、城下町の古い建物(山謙酒造・酒蔵・店舗/旧ホテル小諸)公開と、信州地域デザインセンターの「まちづくりディレクター養成講座」メンバーによる、ふたつの建造物の活用プラニング含めたまちづくりのプレゼンテーションに、11月22日参加しました。
この講座のメンバーは、全国で働くさまざまな専門性を持ったの人たちであり、ネットから得られる情報をもとに、Zoomを活用し、企画を積み重ねてきたようです。
小諸を訪れたことがない人たちがほとんどで、内容は実に的を射ており、衝撃を受けました。
デジタル社会が本格化し、ネットを活かして知の集約を図る、リモートワークの可能性を改めて実感しました。
こうした取り組み全ては、居住者、移住者、旅行者、関係者にとって、より「千曲川ワインバレー」を魅力的にし、人や投資を呼び込み、その結果、千曲ワインバレーのワインの売上を増やし、千曲川ワインアカデミー卒業生のワイングロワーとしての経営を支援することを目的としています。
栽培者は年々増え、加工できる体制も整い、あとは増えていくワインの供給を吸収してくれる需要を、いかに生み出すかの重要なステージに入りました。これら全てがCWCの最大のミッションである、「生産者支援」と私たちは捉えています。
《小諸市のケース》
すでにお伝えしている通り、小諸市小泉俊博市長は、2期目の基本政策に、健幸都市こもろ(小諸版ウエルネスシティ)を掲げました。
《人口減少時代において人びとから選ばれる町のあり方》として、
「すべての市民」が豊かで輝いた人生、自己実現できる、住んでよかったと感じられるまち。
「市外の人びと」から癒される、自分に還れる、住んでみたいと感じられるまち。
の実現を公約しました。
この基本政策を発表したのは、新型コロナウイルス感染拡大以前であり、新しいまちのヴィジョンは、世の中を一変させたコロナ禍が起きても、十分に説得力のある内容となりました。
昨今のさまざまなアンケートを見ても、コロナ禍を機に、大都市でのワークスタイル、ライフスタイルに不安を持ち、見直したい意向を持つ人びとの比率が高くなりました。
小諸市への移住相談件数も、対前年3.3倍になっていると先般発表がありました。
今回の2つのチームの発表は、コロナ禍で増加する大都市でのワークスタイルやライフスタイルを見直し、移住を検討する人たちや、地元の生活者である市民、さらに旅行者それぞれの視点から、下記のように小諸の将来の可能性を示していたのが、印象的でした。
小諸の今後の可能性〉
(生活者の楽しみ)
・食、文化、教育、スポーツなど、生活体験満足度の向上
・空き家を有効活用した地域の空洞化抑制と魅力向上
(移住者の楽しみ)
・従来の企業誘致に留まらない、若者を惹きつける新しい働き方、暮らし方の実現。新たな挑戦への寛容さ。
(旅行者の楽しみ)
・沿線に点在する魅力的なコンテンツを生かした回遊促進
・軽井沢からの誘客(宿泊)と交流人口増加
(しなの鉄道、行政への期待)
・ビジョンに向けた協力、町の賑わいが、今後の起点になる。
・地域内外への情報発信スキームの構築
〈滞在することの価値〉
島崎藤村「千曲川のスケッチ」より
小諸義塾の教師として6年間滞在した、島崎藤村がみた小諸の風景を探す旅
「もっと自分を新鮮に、そして簡素にすることはないか」
〈将来像のコンセプト〉
これからの千曲川流域の原風景を育てよう
・都心一極集中の時代が長く続いた結果、自然豊かな環境で暮らしたい、と願う人たちが増えた。コロナ禍で加速化。
・暮らしのスタイルはさまざま。移住する人、都心に拠点を持つ2拠点生活の人、ワーケーションで訪れる人、観光で訪れる人。
・時間に追われ、自分自身よりも「他人」に合わせて生きていた都会の生活に比べて、ここにあるのは、どこかに忘れていた、人間らしく生きる贅沢。
・これからの時代、人々は価値を“享受”することよりも、自らが“参画”していくことに価値を感じている。
・原風景を大事に想う『生活者×移住者×旅行者』が一緒に力を合わせて、新しい賑わいを、新しい日本の原風景を、しなの鉄道をハブとしてつくっていく。
今回の提案の中には、すでに活動中の小諸市のふたつのNPO法人〈町並み研究会〉と〈こもろの杜〉の多様なまちづくり活動を尊重し、賛同し、さらに新たなビジョンにつなげていくこと。
エリアに共通する課題を共有し、活動を通じ仲間を広げながら、それぞれのまちごとに集まる場所を作り、トライアルしていくこと。
そして公民学連携による広域的なまちづくりを進めるために、「千曲川流域デザインセンター」の設置を提案しています。
これからのまちづくりプロジェクトの活動は、今回の2チームのように小諸を訪れたことがなくとも、優れた検索技術やZoom/Slack等の情報ツールを活かすことで、地域外の多くの人びとの英知も結集できると、再認識した次第です。
まさにコロナ時代のオープンイノベーション手法です。
行政は、新しい時代に則した地域やまちのビジョンを掲げ、自由な発想ができる民の力や投資を迎え入れるための環境整備に徹すべきと、日頃私は考えております。
小諸市のように、時代に則してオープンに知を結集する取り組みに、CWCは引き続き積極的に関わってまいりたいと思います。
併せて小泉小諸市長が現在会長を務める特区協とも連携を深め、ワイナリー観光のためのインフラ整備や、生産者が安定供給できる需要基盤の獲得に取り組みます。
特区協8市町村のベクトルを合わせるための、情報発信や情報共有の基盤づくりにも、CWC法人会員企業とともに取り組んでまいります。
最後に読者の皆さまにも、こうした新しいまちづくりに関心を持っていただき、積極的に関わっていただければ幸いです。
今回はCWC第6期の取り組みテーマと、それぞれのテーマに関わる最近の動向について、お知らせしました。
アルカンヴィーニュフォーラム
「千曲川ワイン倶楽部」
代表 小山 眞一