【レポート】ヴィラデストワイナリー代表取締役小西超(とおる)さんとめぐる
オンラインワイナリーツアー「ヴィラデストワイナリー編」
(ファシリテーター 田口あきこさん:日本ワインなび編集長)
「カンパーイ!」小西さんの声でオンラインワイナリーツアーはスタートしました。
小西さんはヴィラデスト地下のギャラリーから、約50名の参加者はリモートで、ヴィニュロンズリザーブシャルドネの乾杯です。
今年8月、小諸市のテールドシエルを舞台に配信され好評だったオンラインワイナリーツアーの第2弾で、ファシリテーターは前回と同じく、日本ワインなび編集長の田口あきこさんです。
2回の乾杯のワインとチーズのセットは、事前に参加者に届けられていました。
〈今回届けられたセット〉
・ワイン① ヴィラデストワイナリー ヴィニュロンズリザーブシャルドネ2019ハーフボトル
・ワイン② ヴィラデストワイナリー プリマべーラメルロー2018
・チーズ ボスケソ MIMAKI KIMOTO 酵母熟成ソフトチーズ
乾杯のワインはヴィニュロンシャルドネ2019、ヴィラデストの畑の中でも厳選したぶどうで作られています。
同銘柄の2005ヴィンテージは洞爺湖サミットのランチで、また2014ヴィンテージは伊勢志摩サミットディナーで提供されたものです。
厳選したぶどうのみを使って樽発酵、樽熟成した上品なシャルドネ。
参加者からも「美味しい」のコメントが寄せられました。
特に2019は気候条件がよく“グレートヴィンテージ”とよべる仕上がりだそうです。
「さらに10年寝かせるともっと複雑味が出て美味しい」(小西さん)
ボスケソのMIMAKI KIMOTO酵母熟成ソフトチーズは日本酒の黒澤酒造の蔵付き乳酸菌で発酵されたチーズで、日本酒、シャルドネとベストマッチします。
「お豆腐でいうと絹ごし豆腐、きめが細かく酸味・塩味・旨味ともにシャルドネの果実味を一層引き立てていますね」(田口さん)
2杯目の乾杯はプリマヴェーラメルロー2018で、八重原地区(千曲川左岸)のぶどうを中心に作られています。
「果実感があるので、バランスよく軽やか、食事に合わせやすい赤です」(小西さん)
ギャラリーで乾杯した後は、小西さんが解説しながら貯蔵庫、醸造所へ歩きました。
まるでいっしょにヴィラデストを歩いているような感覚になりました。
ヴィラデストに行ったことのある人は館内を思い出し、まだ行ったことのない人は行きたくなってしまう、そんな演出でした。
コロナ禍で、ヴィラデストでもワイナリー見学のプログラムが中止されているので、今回貯蔵庫から醸造所まで小西さんの案内で見学をしたのは貴重な体験でした。
この臨場感こそ、オンラインイベントの最大の特徴と言えます。
貯蔵庫には主に2018年の赤と2019年の白が出番を待っていますが、2019年は質量とも良好で、貯蔵タンクは満杯とのことです。
サミットに採用されたヴィニュロンズリザーブシャルドネもまだ在庫がありました。
醸造所の壁にはヴィラデストオーナーである玉村豊男さんのぶどうの絵が飾られています。
ワインを熟成している樽とステンレスタンクを見守っている(見張っている?)かのような明るい醸造所、ヴィラデストならではのおしゃれな雰囲気が印象的です。
今回特に期待されていた「ワイン仕込み風景の現地取材ムービー」は前日に配信されており、メルローとシャルドネそれぞれの収穫後から仕込むまでをじっくり繰り返し見ることができました。
白は絞った果汁で発酵、赤は皮もタネもいっしょに発酵、という段取りを実際に見ることができます。
発酵中のメルローがたてている「シュワ~シュワシュワ」と音も間近に聞こえてきて、思わず画面に顔を近づけてしまうほどの臨場感です。
録画ではまた、畑で収穫をしながら小西さんが、ヴィラデスト設立以前の体験から現在までのワインづくりに寄せる思いを語っています。
前職時代のワイン事業の中断、師匠である麻井宇助さんとの交流、玉村さんとワイン事業を決断した瞬間のエピソードなどから、普段の淡々としていてクールな小西さんからは想像できない、熱い想いが伝わってきました。
オンラインイベント最後は参加者からの質問に小西さんが答えるQ&Aタイムの要約です。
小西さんにとって理想のワインはヴィラデストの土壌を反映して、その景色が目に浮かぶような、またクリーンで凝縮感のあるワイン。
ヴィラデストの枠を外してみると、もともとブルゴーニュのシャルドネ、ピノノワールが好き、つまり力強いというよりは、繊細でエレガントで複雑なワインが好みとのことでした。
気象に関する質問も多数ありました。
今年は7月の長雨と8月の猛暑と気候の変化が激しく、栽培は苦労しましたが、スタッフの頑張りでなんとか乗り越えました。
それに加えコロナ禍があり、苦労の多い1年だったと振り返りました。
地球温暖化は進展し、台風、雹害、暴風雨など次々と難題はふりかかりますが、自然には抗えないので、雨よけを設置する、気候にあった新しい品種にチャレンジするなど、「何とか対応する」のがモットーです。
スクリューキャップが増えていることに関する質問がありました。
ヴィラデストでは2015年からスクリューキャップを使っています。
コルクはいいのですが、質の悪いものやコルク臭があるもの、酸化の原因になる空気を通すものがあります。
安定した品質を保つスクリューキャップでも、少し酸素を通すものがあり、経年熟成ができるそうです。
ワインに良いものを選んで使っているとのことでした。
オンラインならではの良さもありますが、「やはりヴィラデストに足を運んでいただき、雰囲気や美しい景色を楽しんでほしい」と締めくくられました。
旅行や外出がままならない状況ですが、そんな時はオンラインイベントで下見、味見して、近い将来ワインづくりの現場で小西さんやスタッフ、ヤギ子と再会することを楽しみにしたいと思います。