【レポート】千曲川ワインバレーに恋する「新しい秋」
2020年10月31日~11月3日
天気に恵まれ、紅葉真っ盛りの軽井沢で、今年度初めての千曲川ワインバレー特区連絡協議会(以下特区協)による消費者向けワインイベントが開催されました。
会場は軽井沢プリンスホテルウエスト、新しいMICEスタイルを提唱する施設のメインバンケットホール長野、2,000人収容です。
今回「密」をさけるため、さらに試飲会場は新設されたバンケットテラスKURUMIが用意されました。
コロナ禍が本格化した4月、特区協事務局を、小諸市が上田市より引き継ぎました。
4月以前から企画していた、しなの鉄道沿線のワインイベント(坂城―上田―東御―小諸)のほとんどが、残念ながら中止を余儀なくされ、また軽井沢で7月に企画したワインイベントも実施できませんでした。
飲食店の営業自粛などでワインの販売が低迷している状況下、生産者支援のイベントを開催したいという特区協の悲願に、軽井沢プリンスホテル、マンズワイン、メルシャン、ヴィラデストワイナリーが賛同、協力いただいたことで実現したのが、今回のワイン会です。
千曲川ワインバレーの名付けの親で、東御市におけるワインづくりのパイオニアである玉村豊男氏の基調講演と、長野市出身のマスターソムリエ高野豊氏の講演は、初日に会場並びにオンラインで約100名が視聴しました。
開催期間中は、千曲川ワインバレー東区のワインの有料試飲および販売が行われました。
このイベントにに参加した生産者は25社(ワイナリー13社、ヴィンヤード12社)です。
【上田市】
シャトーメルシャン椀子ワイナリー、ヴェレゾンノート、Sail the Ship Vineyard、トゥモローワイン
【小諸市】
マンズワイン小諸ワイナリー、ジオヒルズワイナリー、アンワイナリー、テールドシエル、ドメーヌ・フジタ、ミリ・ボーテ
【千曲市】
北澤ぶどう園、イルフェボー、Wa Yawara
【東御市】
ヴィラデストワイナリー、アルカンヴィーニュ、リュードヴァン、はすみふぁーむ&ワイナリー、ナゴミ・ヴィンヤーズ、496ワイナリー、アグロノーム、Aperture Farm
【坂城町】
坂城葡萄酒醸造株式会社
【立科町】
たてしなっぷるワインリー、ヴィンヤードカラリア
【長和町】
オードリーファーム
4日間でのワイン販売数は、試飲分をふくめて253本、1社あたり3~15本の売り上げとなりました。
直接生産者と話したお客さまが試飲をし、ワイン購入につながった例もありました。
市場では完売になっているヴィンテージをイベントのために保存していたため、お目当てのワインがみつかり、購入できたと喜ぶ来場者もいました。
メディアや旅行会社などの来場も多く、参加者にとって収穫があったようです。
コロナ禍で感染拡大状況が流動的だったため、開催を決定したのが約1ヶ月前、チラシが完成したのも2週間を切っていたため、当初ターゲットとしていた軽井沢在住者の来場も伸びませんでした。
また「密」を避けるため、ホテル内においても大々的な宣伝が展開できなかったり、会場がフロントから遠かったため、ホテル滞在者を十分集客できず、多くの課題は残りました。
今回イベントの試飲コーナーを担当した軽井沢プリンスホテルの料飲部門支配人でソムリエの仁科勉氏は、ALL DAY DAINNING LOUNGE/BAR Primroseで接客する際、興味のありそうなお客さまにはイベントを紹介し、来場に繋がっているとのことでした。
仁科さんは4月に東京から軽井沢に着任以来、東地区ワイナリーを訪問して地元ワインへの理解を深め、お客さまに対して、千曲川ワインを紹介されています。
軽井沢町の町花である〈サクラソウ〉から名付けたPrimroseでは「千曲川ワインバレーデギュスタシオンセット」:地元ワインの3種のテイスティングセットを提供しています。
朝食からディナーまでの終日ブッフェダイニングであるため、多くのお客さまが来店され、カジュアルな気分で食事を楽しまれます。
「ワイン目的でないお客様にこそ地元のワインを紹介していきたい」。そのためには今後さらに多くのスタッフを育てる必要があると話されました。
※写真は、Primroseの「千曲川ワインバレーデギュスタシオンセット」
「日本ワインは価格が高いことが課題という声は多いのですが、さらに高いスイスワインは、フランスと比べると価格もイメージも勝てません。しかしほとんど国内で売り切っている。なぜかと言えば、スイスのホテル/レストランでは、ワインリストの8割をスイスワインにして、お客さまに提供しているから。」(高野さん)
今後の取り組みに関して、「ワイン産業に対する地域(住民および自治体)の理解が進みつつある」(玉村さん)、「地域の飲食店や酒販小売店が、魅力的な地域のワインに切り替えて、取り扱いを増やしていくことが必要」(高野さん)と、さまざまな地元の事業者が連携する必要性を提唱していました。
コロナ禍にも第三波がきています。
「コロナさえなければ」とぼやいてみたり、元に戻るのを待っていても仕方なく、この状況下にあっても、地元や首都圏にファンをもっと増やしていかなければなりません。
今後のワイナリー観光やイベントのあり方には、もっと新しい発想やアイデアが求められてまいります。
今回のイベントは、いろんな気づきを与えてくれました。