ワインぶどうは収穫の季節を迎えています。
例年であれば、秋の行楽や収穫ボランティアなど多くの人がワイナリーに足を運ぶ時期ですが、今年は違います。
コロナ禍で、バスなどを利用したツアーが自粛となり、また千曲川ワインバレーの各地のワインイベントも、軒並み中止となっています。
小規模ワイナリーの集積地では、流通にのせて販売するよりも、お客様に現地に足を運んでいただき、試飲後購入というプロセスが、効率の良い売り方とされてきました。
今回開催された「オンラインワイナリーツアー」は、コロナ禍で危機的状況下にあるワイナリーを救済する、有効な手段として期待されています。
企画および当日のファシリテーターは、千曲川ワインアカデミー4期生、CWC運営委員、日本ワインなび編集長であり、レコール・デュ・ヴァンの講師の田口あきこさんでした。
訪ねたワイナリーは長野県小諸市糠地にあるテールドシエル、8月下旬にワイナリー(醸造施設)が完成するお祝いを兼ねて開催されました。
8月29日土曜日14:00~15:30。90分は長いのではないかという当初の心配も、参加者に「あっという間だった」と感じさせる、充実した内容でした。
オンラインイベントに参加してみると、進行がもたついたり、スケジュールが予定どおり進まず、内容が割愛されてしまうケースが、よくあります。
今回のツアーは、下記のような事前準備が十分なされており、ほぼ予定通り進行しました。
・スケジュールが事前に公開されていた
・訪問先であるワイナリーのワインが、参加者全員に事前に届けられており、同じワインをいっしょに楽しむ感覚が得られた
・田口さんからオーナーの池田さん、栽培醸造責任者の桒原さんへと、3カ所のバトンタッチがスムーズだった
・約50人が参加したが、全員ミュートだったため、表情は見えても流れを止めずに進行した
・チャット機能を使ってそれぞれの参加者が感想や質問を共有できた
・景色やワイナリー、移動途中見える花畑や山の景色がクリアで臨場感があった
池田さんの紹介は、地図や写真を背景に、ご本人のインタビューも交えて進行しました。
池田さんがワインづくりを思い立って下見した糠地の標高平均930mの地、そこで遭遇した夕立の後の雲海に「この雲海の上をすべてぶどう畑にする」と決心されたそうです。
参加者が共感を覚えたのも画像の効果でしょう。
テールドシエル の雄大な景観は行かなければ伝わらないのですが、参加者に「行きたい!」と思わせるのには十分な臨場感でした。
続いて、カメラを栽培醸造責任者の桒原(くわはら)さんにスイッチして、ライブでヴィンヤードを体験しました。
桒原さんは16年間栃木県足利市のココ・ファーム・ワイナリーでワインづくりに携わり、今年4月奥さまの実家であるテールドシエルの栽培醸造を担うために、小諸に移住されました。
桒原さんのガイドでヴェレゾン10~14日目のピノ・ノワール、そしてふっくらと透明に膨らんだシャルドネの畑を歩きました。
畑から完成直後のワイナリーまで、桒原さんのカメラから届く花々や山の景色を楽しみながら共に移動しました。
ヴィンヤードの広さは約4haで12,000L=14,000本の生産が可能です。
目指すワインづくりについて、「ヴァン・ナチュール、ぶどうがなりたいワインにしたいんです。」また「ワインの90%はぶどうで決まる」と、シンプルなワインづくりを目指していると話されました。
イタリア製の圧搾機によって潰した果汁は、ポンプを使わず、自然の摂理の重力で回収されます。
果汁にストレスを与えず過度な酸化を防ぐためです。
ワイナリー内覧の前にソーヴィニヨンブランで、また内覧の後にはピノ・ノワールで「カンパイ」しました。
チャットでは「酸がイキイキ美味しいです」「ワインも景色も最高です!」「絶対行きたいです!」など次々とワインの感想などが表示されました。
チャットには参加者からの質問も数多く寄せられ、ツアーの最後に池田さんが回答されました。
一部をご紹介します。
Q.「テールドシエル はどんな意味ですか」
A.「天空の大地、夕立のあとに見た通りの景色を意味します」
Q.「バリックの樽で発酵させると、中が見えにくくて発酵状態が分かりにくい気がしますが、だいじょうぶなのでしょうか。」
A.「毎日パイプで中のワインの様子、酵母の動きをチェックしています」
Q.「東京ではどこのレストランやお店で飲めますか?」
A.「銀座NAGANOで飲めますし、購入できます。東京はこれから営業します」
最後に池田さんからのメッセージはとても印象的なものでした。
『テールドシエルは自家栽培してワインをつくるドメーヌ型のワイナリーです。家族ぐるみで経営するアットホームなワイナリーなので、誰でも疲れたり、悩みごとがある時はここにきて、リフレッシュして帰ってもらいたいと思います。』
花や蝶、糠地の自然を大事にしてこられた池田さんのお人柄が、画面からも伝わるエンディングでした。
今回のオンラインツアーは7月下旬に告知スタート、日本ワインなびのHP・Facebook、Twitter、Instagram、千曲川ワイン倶楽部のHPやFacebook、ヴィノテラス、Wine-Link、またアルカンヴィーニュ、レコール・デュ・ヴァンのFacebookで紹介されました。
8月中旬には当初の定員27名に達し、増員したところ最終的に約50人が参加しました。
参加費は8,430円(フルボトルワイン2本、クール便配送料含む)、テールドシエル のソーヴィニヨンブランとピノ・ノワールが配送されました。
「今後も生産者と消費者を繋げるイベントを企画していく」と田口さん。
次の企画も楽しみです。