《新たな動き》
軽井沢町、御代田町、佐久市、千曲川ワインバレー東地区には、新たな動きが見られます。
軽井沢観光協会は、先人が“屋根のない病院(天然のサナトリウム)”と説いてきた軽井沢を、近年『ウエルネスリゾート』と標榜しております。
その軽井沢町には、5月18日コンドミニアム型ウエルネスリゾート施設「Green Seed Karuizawa」が、浅間サンラインの起点である追分に、開業しました。
同施設の責任者は、千曲川ワイン倶楽部(以下CWC)会員西沢和浩さんです。
軽井沢で万平ホテル、軽井沢マリオットホテルを有する森トラストグループは、コロナ禍を機に、下記の3つのウエルネスエクスペリアンス(自然体験・食体験・マインドウエルネス)を柱にした「Wellness GOキャンペーン」を6月8日より開始しました。
軽井沢マリオットホテル含む10施設が対象となります。
〈自然体験〉
温泉湯治や森林浴など、自然のエネルギーを活用し、免疫力アップ、代謝アップを叶える様々なアクティビティ
〈食体験〉
発酵食品・精進料理・地産地消など、長寿に寄与するとされる魅惑的な食体験
〈マインドフルネス〉
絶景や歴史的建造物で行う禅、瞑想、YOGAなど、精神のリラックスおよび集中力を高めるアクティビティ
同じく軽井沢では、軽井沢プリンスホテルウエストのWEST *MICE ZONEがリニューアル。
MICE専用のエントランス、ロビー、ラウンジと、二つのレストランが新設され、7月23日グランドオープンしました。
特に ブッフェダイニングPrimroseでは、地産地消の料理や、千曲川ワインを採用するという画期的な方針が発表されました。
前日22日には、県内メディア向けの試食会/試飲会があり、私も招かれ、千曲川ワインバレー東地区の発展経緯について、当日の招待者に説明させていただきました。
2023年に日本で開催予定の、G7サミットの開催地獲得に向けた、プリンスホテルグループの意気込みを感じました。
*MICE: 企業等のミーティング(Meeting)、企業等が行う報奨・研修旅行(Incentive Travel)、国際機関・団体・学会等が行う国際会議(Convention)、展示会・見本市・イベント(Exhibition/Event)の頭文字を使った造語で、これからのビジネスイベントの総称。
御代田町には、浅間サンライン沿いに、レストラングループひらまつの本格的オーベルジュ、「THE HIRAMATSU HOTELS&RESORTS KARUIZAWA」が、年内開業予定です。
ほかにも千曲川ワインアカデミー卒業生が、同町の大浅間ゴルフクラブの近くで、ヴィンヤードとオーベルジュを計画中です。
同じく浅間サンライン沿いの小諸市糠地地区には、千曲川ワインアカデミー2期生の〈テールドシエル〉池田岳雄さんが、平均標高930mの4haヴィンヤードに、8月開業を目指してワイナリーを建設中です。
高標高圃場で育ったソーヴィニヨン・ブランは、日本のトップレベルであると専門家から高評価を得ています。
眺望に優れた同地区には、アカデミー卒業生が多数圃場を確保し、ワインぶどうを栽培中です。
委託醸造したワインをリリースするワイングロワーも年々増えています。
さらに県外企業も、若手社員を千曲川ワインアカデミーに複数派遣し、すでにヴィンヤードを開園、順次ワイナリー&カフェを企画中です。
糠地地区には、レストランやベーカリーを開業した移住者がすでにおり、小諸市のワイナリー観光の戦略拠点になっていくことは、間違いありません。
リゾート事業企業にとって、魅力的な投資対象先になりつつあります。
上田市に、一昨年9月に開業したメルシャン社椀子ワイナリーのあるマリコヴィンヤード約29haは、7月13日世界最高の葡萄畑を選ぶ「ワールズ・ベスト・ヴィンヤード・アワーズ2020」のトップ50が発表され、30位に選出されるという朗報が飛び込みました。
《日本を世界の銘醸地に》をスローガンにしてきたシャトーメルシャンにとって、世界の銘醸ワイン産地の仲間入りを、マリコヴィンヤードが果すという快挙でした。
玉村豊男さんが目論んだ、軽井沢町追分から上田市まで続く浅間サンラインの『千曲川ワイン街道』化と、軽井沢町、御代田町、小諸市、東御市と続く、1,000m林道と、浅間サンラインを楕円で結ぶ《浅間ワインオーバル》を、高標高地域ワイナリー観光の中心にしようという構想が、にわかに現実味を帯びてきました。
千曲川ワインバレー特区連絡協議会(以下特区協)を中心に、推進したいと考えております。
軽井沢のプリンス系のアウトレット、ホテル、ゴルフ場は、6月1日より営業が再開され、3ヶ月間静かだった軽井沢にも、徐々に旅行者が戻りつつあります。
大都市の新規感染者が高止まりする中、政府肝いりの、観光業の需要喚起を狙いとする「Go Toトラベルキャンペーン」は、7月22日より東京を除外してスタートしました。
《コロナ禍とウエルネス》
今回のコロナ禍で、地域にとって医療の充実はいかに大切かが、再認識されました。
佐久市には、厚生連佐久総合病院、そしてドクターヘリを持つ緊急医療の厚生連佐久医療センター、佐久市国保浅間総合病院、さらに小諸市には厚生連浅間南麓こもろ医療センターが存在し、地域医療の一大拠点となっております。
佐久市のみならず、南北佐久地区の自治体にとって、大変心強い存在です。
こうした医療事情に鑑み、軽井沢町同様新幹線佐久平駅を持つ佐久市は、東京から70分という地の利もあり、隣接する御代田町含め、幅広い年代の移住者が増え続け、数少ない人口増の自治体として知られています。
前回ご紹介しましたように、星野リゾート社星野代表は、Withコロナの環境下での観光需要を喚起する、〈3密のない旅〉〈30分~1時間圏内のマイクロツーリズム〉を提唱するなど、観光業界も発想を転換するイノベーションが、急務となってきました。
特区協は、軽井沢の有力リゾート企業と連携し、宿泊施設と地域や、生産者との新たな双方向のネットワーキングによる、“小さな旅”マイクロツーリズムの実現に向けて動き出しました。
CWCもこの活動を全面的に支援してまいります。
当分インバウンドは期待できず、海外旅行も困難な状況が続く中で、早くも第二波が到来しているWithコロナ期の観光は、治療薬やワクチンが開発されるまでは、感染防止と社会経済活動の両立のための試行錯誤を、繰り返すことになるでしょう。
コロナ禍で明らかになったのは、「都市集中型」社会の脆弱性です。
日本の未来社会の持続的発展を可能にするには、東京一極集中に示される「都市集中型」か「地方分散型」かは、長い間議論されてきました。
コロナ禍を通じて明らかになったのが、感染症の災禍が大きいニューヨーク、パリ、ロンドン、そして東京など、人口の集中度が高い大都市圏です。
これらの極端な「都市集中型」地域は、“3密”が常態化し、感染症の拡大が生じやすい環境であることが明白になりました。
国別に見ても、全体として中小規模の都市や町村が広く散在する「多極的空間構造」のドイツのような「分散型」国家の方が、パンデミックには強いことが示されました。
個人の生き方や、人生のデザイン全体を含む包括的な「分散型」社会の優位性が明らかになりました。
ICT技術革新によるリモートワーク、テレワークの可能性が広がったのも、後押ししています。
同じステイホームをするなら、自然豊かな環境に身を置き、ストレスの少ない地方移住を検討する子育て世代も、急速に増えてきています。
ウエルネスの新しい定義は、健康はあくまで手段・ベースであり、豊かな人生、輝く人生を目指す過程やより広い健康感を超えた「生き方」、「ライフスタイルデザイン」、自己実現を表しています。
そこでのキーワードは、「ワークスタイル」と「ライフスタイル」です。
政府の外出自粛要請に応えるため、多くの企業は、通勤ラッシュを避ける在宅ベースのテレワークに、初めて踏み切りました。
その結果、新しいテレワークアプリのZoomミーティングなどが一気に普及しました。
医療崩壊に瀕し、遂にオンライン診療も解禁されました。
教育界も臨時休校が長引き、オンライン学習の導入が進みました。
今までの前提が崩れたことによるニューワークウエイが次々生まれました。
緊急事態宣言解除後も、オフィスコストの削減につながるテレワークを継続する大手企業も多く存在し、コロナ禍は大きな社会変革の転機となりました。
《ウエルネスシティこもろの誕生》
本年4月に東御市、小諸市の市長選が行われ、花岡東御市長、小泉小諸市長が再選されました。
特に小泉市長は、2期目の基本政策に、
健幸都市こもろ(小諸版ウエルネスシティ)を掲げました。
《人口減少時代において人びとから選ばれる町のあり方》として、
「すべての市民」が豊かで輝いた人生、自己実現できる、住んで良かったと感じられるまち。
「市外の人びと」から癒される、自分に還れる、住みたいと感じられるまち。
の実現を公約しました。
今回のコロナ禍で、この地域の特性は、ウエルネス資源に満ちていることが再認識されました。
最近の様々なアンケートを見ても、コロナ禍を機に、大都市でのワークスタイル、ライフスタイルに不安を持ち、見直したい意向を持つ人々の比率が高くなりました。
「コロナ移住」に対して、人口減に悩む地元自治体が、どのように積極的に受け入れるかの勝負になるような気がいたします。
小諸市はウエルネスライフを担保するまちとして、その先駆けとなります。
滞在型ウエルネスリゾートを目指す軽井沢にとっても、千曲川ワインバレー東地区は、世界に認められたプレミアムワインの銘醸地であり、今後最大の観光コンテンツとして、そのゲートウエイの役割を担っていくことになります。
さらに軽井沢と千曲川ワインバレー東地区との一体化は、単にワイナリー観光だけでなく、With・アフターコロナに向けて、ウエルネスライフを重視する当該当事者たちが将来ビジョンを共有して、スピーディに柔軟に対応していくことで、日本を代表するウエルネスエリアとしての地歩を、築いていくことになるでしょう。
アルカンヴィーニュフォーラム
「千曲川ワイン倶楽部」
代表 小山 眞一