【新規ワイングローワー紹介】
糠地(ぬかじ)に今年植栽スタート、上田俊彦さん由利子さんご夫妻
千曲川ワインアカデミー4期生の上田さんがご夫婦でワイン用ぶどうを植え始めたのは今年3月。
場所は糠地の標高およそ880m、そこには建物がほとんど見えない、視界にあるのはリンゴをはじめとする木々と蓼科山、浅間山そして青空だけなのです。
畑の境目に立てられた無垢の木柱もその景色にマッチしています。
上田さんは現在57歳、千曲川ワインアカデミーに東京から1年間通い、昨年大手印刷会社を退職して小諸に移住しました。
千曲川ワインバレーにはこれまでにもお医者さん、証券マン、飲食店経営などさまざまな経歴を持つグローワーが誕生しましたが、上田さんはプロのマーケター。
自分が作るワインのプロモーションをどのように企画しているのだろうかと気になります。
昨年2019年まで携わっていたのは、得意先企業の商品開発や事業開発、プロモーション企画、国や自治体の地域活性化事業、これらに付随する自社のサービス開発、新事業開発など多岐に渡ります。
これからは、これらの経験を活かし、人のためでなく自分自身のワインづくりやワイナリーのためのブランディング、プロモーションをすることになります。クライアントは自分たちです。
3枚の畑合計8.5反歩の開放的な畑に植えられたぶどうの木は2,000本。
ガメイ、カベルネ・フラン、ソーヴィニヨンブラン、シャルドネ、ピノグリ、ゲヴェルツトラミネールの6種合計約2,000本。
上田さんが目指すワインづくりは自然派のワインです。
月の満ち欠けなどの天体カレンダーの採用やぶどう作りを総体的に生態系として認識する「ビオディナミ」を可能な限り取り入れていきたいと考えています。
具体的には、Ⅰ.有機を重視したぶどうづくり Ⅱ.野生酵母を使い、醸しの方法にこだわった醸造作業 Ⅲ.亜硫酸塩の量のコントロールなど、ワインづくり全般に自身の考える「最適なスタイル」を選択していきます。
自然派ワインをめざす上で、糠地は適している理由がありました。
今回上田さんがぶどうの栽培をしている土地は、約10年そして別の畑は30年耕作放棄地でした。
そのため土地の診断を受けた結果は化学肥料や農薬の残留がないそうです。
今注目の「糠地」地区のワインづくりの状況は次回のメルマガでお知らせいたします。
「ブルゴーニュのあのロマネコンティもビオディナミですよ」とのこと。
シャルドネやソーヴィニヨンブランのなど白ワインは通常搾汁した果汁から醸造しますが、果皮とともに醸す時間をどのくらいにするかなど試行錯誤してつくるオレンジワインも手掛けていきます。
上田さんのワインづくりは、消費者=飲む人も想定されています。
自身が自然派ワインを飲むことが好きなことから始まったワインづくりには、すでにその展開を見守っている仲間が約300人いるとのこと。
ぶどうをつくるところからそんな仲間を巻き込み、試行錯誤する過程もいっしょに楽しみながら完成を目指していきます。
そんな仲間のお一人、由利子さんのお父さまが島根から訪ねてきて、畑の側で過ごしていらっしゃいました。
奥様の由利子さんがライフワークとしているのは蜜蝋〈ミツロウ〉のろうそく作りです。ミツバチの巣から採れる蜜蝋を使う、中世ヨーロッパの教会でも行われていた方法でろうそくを作ります。一般的にろうそくの材料は石油(パラフィン)ですが、蜜蝋は自然由来のため、口紅などの化粧品やクリームにも使われ、また燃えるときに有害物質を出さず甘い香りがします。ワインとろうそく。お二人ともライフワークが自然嗜好で一致しています。
規模を少しずつ拡大しながら、早ければ3年後に初収穫、翌年初リリース、2025~26年にワイナリー設立を目指します。