《千曲川ワインバレー東地区の変化》
8市町村(東御市・上田市・小諸市・千曲市・坂城町・立科町・長和町・青木村)が参加して、2015年政府認定された広域ワイン特区(千曲川ワインバレー東地区)も、早いもので5年目を迎えております。
8自治体首長で構成する「千曲川ワインバレー特区連絡協議会」(以下特区協)を中心に、地域連携も徐々に進んできました。
特区協主催の「千曲川ワインバレーに恋する講演会とワイン会」は、千曲市、上田市、小諸市、東御市で、すでに4回開催されました。
本年2月には長野県と特区協、県DMO共催で、上田市で初めての「2020千曲川ワインバレーフォーラム」が、開催されました。
このフォーラムには、地域の様々なセクターはじめ、軽井沢で影響力が大きい有力リゾートグループの総支配人以下幹部5名も、熱心に参加されました。
東御市に2015年4月設立された“ゆりかごワイナリー”アルカンヴィーニュに、同時開校した「千曲川ワインアカデミー」の卒業生は、5年間で120名を超えました。
千曲川ワインバレー東地区には、すでに18ワイナリー(うち東御市に10ワイナリー)、50近いヴィンヤードが存在します。
アカデミー卒業生以外のワイングロワーも年々増え、ワイナリー設立予備軍は増える一方で、今年度も東御市、小諸市中心に3~5社の開設が予定されております。
同時に大手ワインメーカーの東地区への進出が続き、47年の歴史を持つマンズワイン社小諸ワイナリーに続き、2019年メルシャン社もマリコヴィンヤードに椀子(まりこ)ワイナリーを設立しました。
マンズワイン社は、従来の小諸ヴィンヤード、上田市東山ヴィンヤード、に続き、長和町に長和ヴィンヤードを開園、メルシャン社はマリコヴィンヤードを30haに拡張、サントリー社も立科町に新規のヴィンヤードを開設しました。
千曲川ワインバレー東地区が、日本で欧州系ワインぶどうの栽培の最適地であることを、大手メーカーが実証しました。
ワイナリーやヴィンヤードの増加とともに、ワイン産業の関連産業となる、レストラン、オーベルジュ、チーズ工房、ベーカリー、生ハム工房、ブランド牛牧舎等が、年を追うごとに東地区内に増加しております。ワイン産業クラスターが徐々に形成されつつあります。
《軽井沢にとっての千曲川ワインバレー東地区》
緊急事態宣言の対象地域が全国に拡大後、ゴールデンウイークを迎えた長野県は、「信州の観光はお休み中」とメッセージを発し、苦渋の決断で、県外からの流入を阻止しました。
軽井沢では、大型連休前から5月末までアウトレット、ホテル、レストラン、ゴルフ場の臨時休業が続き、新幹線軽井沢駅の乗降客は、大型連休中、対前年92%の減少となりました。
緊急事態宣言解除後の長野県は、越県移動を6月19日に緩和し、8月を目処に観光の全面再開に備える方針を示しました。
今回の事態を受けて、軽井沢の観光コンテンツを捉えてみると、アウトレット(軽井沢・プリンスショッピングプラザ)の集客力の凄さがわかります。
休業期間中、軽井沢に流入する車の数が激減したのです。
2019年年間870万人の観光客の80%が日帰りという現実から分かることは、駅前のアウトレットを除くと、町内の観光コンテンツは意外に少なく、軽井沢の主だった観光地は、車ならほとんど1日で見て回れます。
軽井沢を、通年滞在型リゾートに転換するには、滞在時に訪れる観光コンテンツを増やす必要があります。
しかし軽井沢町内で増やすことには限界があり、近隣地域と連携して観光コンテンツを増やしていかねばなりません。
すでに3年前より冬季は、〈軽井沢ベースキャンプパスポート〉を発行し、軽井沢エリア(長野・群馬)17スキー場で利用できる共通リフトクーポン券、191コース、コース総距離134kmを発行しています。
軽井沢をベースキャンプにして、車で1時間圏内の周辺スキー場を楽しむ企画で、県境を越えて群馬県の草津や万座のスキー場も含まれています。
特区協の事務局が、4月より上田市から小諸市に移行しました。
それに先がけ年明けより、小諸市は軽井沢と千曲川ワインバレー東地区を、つなげる活動に着手しました。
軽井沢の有力リゾート企業とのワインイベント企画を、7月のトップシーズンに具体化した矢先に、コロナ禍が発生し、現在は残念ながら白紙の状態です。
ほかの有力リゾートグループも、特区協との関係構築に乗り出しました。
コロナ禍を乗り越え、観光業の復活のためにも、軽井沢の主要リゾート企業群やレストランと、特区協を窓口にした千曲川ワインバレー東地区との地域連携は、Win-Winの関係になれると確信しております。
《コロナ時代の観光:マイクロツーリズム》
最近「クローズアップ現代+」や「ガイアの夜明け」はじめメディアで積極的に発信されている星野リゾート星野佳路代表は、コロナ禍に対応する観光のあり方を、次のように語っています。
「マイクロツーリズム」~地域の魅力を再発見し、安心安全なWithコロナ期の旅の提案~
特徴1 Withコロナ期の旅のニーズ=小さな旅
地元のお客さま中心に、自宅から30分~1時間の自家用車で行ける範囲で、あまり行かなかったところを観光する「小さな旅」を楽しんでいただきます。
そして3密回避しながら安全安心な滞在を提供します。
特徴2 感染拡大防止と地域経済を両立する観光
マイクロツーリズムを通じて地域観光を推進することで、ウイルスの拡散リスクを軽減しながら観光需要を作っていきます。
そして観光業が地域経済に貢献し、観光人材を確保できるよう、Withコロナ期収束後も見据えた観光のあり方を設計し、実践します。
特徴3 地域から学び「地域再発見」を提供
マイクロツーリズムで、地域の方との体験機会を通じた交流を深め、新たな気づきを得ることで施設を進化させたいと考えています。
そして地域の方にも、改めて地域の特性を発見し、愛着を持っていただけるような施設を目指します。
3密を回避し、安全性を重視した滞在スタイルであっても、地域再発見への新たな取り組みで、お客さまの満足度向上に一層努めます。
特徴4 地域の文化の作り手とネットワークを強め、運営力を高める
地域で育まれた文化や生産活動を、地域の方々とのつながりを深めながら、今まで以上に魅力ある体験価値につなげ、より施設の運営力向上に努めたいと考えております。
以上、星野リゾート社星野代表の視座にあるように、軽井沢のリゾート施設と隣接した車で30分~1時間圏内の千曲川ワインバレー東地区との連携交流は、Withコロナ期においては、必然性が極めて高いことになります。
ホテル、ペンション等宿泊施設と地域の人々や生産者との双方向ネットワークを形成することで、マイクロツーリズムは実現可能となるでしょう。
特区協事務局と軽井沢の有力リゾート企業群、レストランとの連携強化活動を、CWCは支援してまいります。
With・アフターコロナに向けた、新しい観光の需要創造ステージに、7月以降本格的に入ることになります。
アルカンヴィーニュフォーラム
「千曲川ワイン倶楽部」
代表 小山 眞一