皆さま明けましておめでとうございます。
本年も第5期目を迎えた千曲川ワイン倶楽部(CWC)を、よろしくご支援お願いいたします。
今年も隔月で「千曲川ワインバレー便り」をお届けしてまいります。
《千曲川ワインバレーの次世代交通システム考察》
昨年10月の台風19号による千曲川流域の爪痕は大きく、被災された住民の日常生活に多大な打撃を与えました。
特に地元の足であった、しなの鉄道の田中/上田間の不通は約1ヶ月にもおよび、通勤通学にも支障をきたしました。
上田電鉄別所温泉線の千曲川にかかる鉄橋の橋脚が落ち、新幹線上田駅に直結する路線が寸断され、不通区間の代替輸送を余儀なくされており、完全復旧には1年以上かかりそうです。
台風19号の来襲は、ちょうど上田市丸子地区メルシャン社のマリコヴィンヤードに、椀子ワイナリーが9月21日開業した直後でした。
上田市にとっては初めてのワイナリーであり、2003年開園したマリコヴィンヤードのワイナリー設立は、上田市の長年の悲願でした。
椀子ワイナリーへの地元の期待が大きく、市とともにさまざまな開業プロモーションが組まれておりました。
しかし台風の被害があまりにも甚大で、上田市が災害復旧対策に専念せざるを得なくなりました。
併せて10月15日~17日までシンガポールで開催された「グローバルウエルネスサミット(GWS)」と連動して、10月18日~20日まで上田市で開催予定であった、国際温泉会議「G3T」も残念ながら直前で中止となりました。
今回の経験で、当地域にとって主要幹線である、北陸新幹線としなの鉄道に不都合が生じた場合のリスクの大きさを痛感しました。
同時に浮き彫りにされてきたのは、主要幹線駅からの二次交通の脆弱さでした。
千曲川全流域でワイナリー数が24社となりました。
東地区だけでも17社を数えます。
特にしなの鉄道沿線駅でのタクシー台数は、新幹線停車駅を除けば、年々減少傾向にあります。
ワイナリー巡回のシャトルバスも、東御市、小諸市には期間限定であるものの、ワイナリーをつなげる交通手段は、限られております。
二次交通として当初期待されたウーバーシステムは、欧米や中国アジアでは普及しているものの、国内ではタクシー業界からの反対圧力が強く、もはや展開が不可能な状況です。
そんな中最近になって普及の可能性ができてきたのが、MaaS(Mobility as aService:マース)です。
MaaSとは、バス、電車、タクシーからライドシェア、カーシェア、シェアサイクルといったあらゆる公共交通機関を、ICTを用いて交通をクラウド化してシームレスに結びつけ、人々が効率的に便利に使えるようにするシステムのこと。
アプリによる最適経路、利用すべき交通機関、所要時間、料金等の検索機能にプラスして、予約や支払い等も端末であるスマホを使い、まとめてできるようになります。
日本では国土交通省が音頭を取り、3つのタイプのMaaSの実証実験19モデルに本格的に取り組んでいます。
1.大都市・大都市近郊・地方都市型(6事業)
2.地方郊外・過疎地型(5事業)
3.観光地型(8事業)
どのタイプも、行政、鉄道会社、バス会社、タクシー会社、ICT企業、大学等を構成員にした、産官学連携協議会を設置し、推進しています。
MaaS導入への国の取り組みの本気度が伺えます。
MaaSの実現及び提供には、スマホやデジタルインフラの整備・普及のほか、鉄道やバスの運行情報、タクシーの位置情報、道路の交通情報等の移動・交通に関する大規模なデータをオープン化し、整備・連携することが必要となります。
さらにユーザーの経路検索、改札通過等の移動履歴や支払情報等のパーソナルデータの活用。ドライバー不足を補う自動運転や、コンパクトモビリティ、電気自動車(EV)などのクルマのイノベーション、さらに効率的な移動手段の分析、提案、改善のためのAIの活用等、いま急激に発展しつつある各種技術が、交差するmobility15サービスと言えます。
さまざまな業界が連携してこそ実現するサービスのため、課題も多々ありますが、少子高齢化で過疎化が進む地方でこそ、交通弱者を救い、縦割り行政の弊害で、広域化が進まない現状を打破できる交通インフラになると期待されます。
しかも技術革新のスピードが早く、今後のサービスの進化も期待できそうです。
千曲川ワインバレーのワインツーリズムにとっても、観光型MaaSは必要不可欠なプラットフォームになっていくことでしょう。
CWCが中心になり、MaaSビジネス実践企業、行政、鉄道会社(JR東日本、しなの鉄道)、大手ICT会社、バス会社、タクシー会社も巻き込んだ「千曲川ワインバレー観光型MaaS研究会」の立ち上げを、「千曲川ワインバレー特区連絡協議会」と連携して検討してまいりたいと思います。
台風19号直撃の経験からも、SNSやMaaSの重要性を再認識しました。
アルカンヴィーニュフォーラム
「千曲川ワイン倶楽部」
代表 小山 眞一