~ 千曲川ワインバレープロジェクトの歩み ~
「ヴィラデスト」や「アルカンヴィーニュ」オーナーの玉村豊男さんが、「千曲川ワインバレー」〈新しい農業の視点〉を上梓されたのが、2013年3月でした。
実は私も2008年4月、所属していた団体の会報誌の巻頭言で、《ふるさと回帰と「東信濃ワインバレー」》を投稿しており、本書は我が意を得たりの内容で、玉村さんともすぐに意気投合しました。
そして2014年に構想実現のために玉村さんと「千曲川ワインバレープロジェクト」をスタートさせました。
私の現役最後の頃でしたが、ことワインに関しては門外漢でしたので、もっぱら「東京世話人」と称して、玉村さんの志を支える、経済人の応援グループづくりに専念しました。
並行して玉村さんは、“ゆりかごワイナリー”「アルカンヴィーニュ」の設立と「千曲川ワインアカデミー」の開講に向けて精力的な活動を開始されました。
「アルカンヴィーニュ」は存続させる社会的使命があると、私に諭されたのもこの頃でした。
私も納得し、玉村さんと一緒に法人、個人のサポーター会員募集に注力しました。
それと同時に、アルカンヴィーニュの存続だけでなく、ワイン産業への人的資産の形成を通じて、千曲川ワインバレー東地区の地域発展への可能性を確信しました。
開業まもない「アルカンヴィーニュ」で、『千曲川ワインアカデミー』が2015年5月開講。
以来1期生から4期生まで91名が修了し、その半数近くは圃場を確保し、ブドウ栽培に取り組んでいることは既に皆さまにお伝えした通りです。現在は5期生35名が研修中です。
玉村さんが仰った、アルカンヴィーニュの社会的使命は、見事に実証されつつあります。
特にアカデミーを卒業した生産者が、自らの圃場を求めて、千曲川流域に散らばり、縦割り行政の壁を超えて連帯し活動する姿は力強く、今やワイングロワーが地域をつなぐ尖兵役を務めております。
さらに4期生からは、講義が土日になり、将来のワイングロワーのみならず、すでにワイン関連事業の事業家や専門家も入校しており、ワイン産業に関連するサービス事業の起業家も、続々誕生しそうです。
ワイン産業クラスターも期待できます。
アルカンヴィーニュが設立された翌年2016年3月に、アルカンヴィーニュ法人、個人サポーター会員中心に、アルカンヴィーニュフォーラム「千曲川ワイン倶楽部」(以下CWC)が、発足しました。
4年目に入ったCWCは、現在アカデミーを卒業した生産者のうち、「CWCアソシエイツ」に登録した50名にフォーカスした支援活動に取り組んでおります。
~ 上田・東御・小諸3市連携の重要性 ~
特にこの地域のワイン産業振興にとって、中心となる小諸市、東御市、上田市の3市連携は不可欠と、早い段階で私は判断し、機会を捉えながら3市長には、繰り返し繰り返し連携に向けた提言活動を継続してきました。
46年の歴史を持つマンズワイン社小諸ワイナリーを持ち、新たに眺望に優れた糠地地区と御牧ケ原地区を戦略拠点として、圃場拡大とワイナリーの開設を目指す小諸市。
ワイン特区を県内で最初に取得し、ヴィラデストワイナリーを皮切りに、今や二桁のワイナリー数に急増中の東御市は、さらに御堂地区の本州最大規模の約28haのワイン用ブドウ団地の第一工区で、今春より植栽が始まりました。
3~4年後は、東御市のワインぶどう圃場面積は、現在の41haから70haに拡大します。
そして悲願であったメルシャン社椀子ワイナリーの開業を9月21日に控えた上田市は、主に千曲川左岸のマンズワイン東山ヴィンヤード、メルシャンマリコヴィンヤード中心に発展しそうです。
それぞれのまちが、日本を代表するプレミアムワインブランド「ソラリス」「ヴィニュロンズリザーブ」「マリコヴィンヤード」をもち、3市が隣接しあい、しかも東京にも近い好立地です。
この3市に刺激され、隣接する広域ワイン特区他市町村にも、ワイングロワーが多数入植し、ヴィンヤードの拡張とワイナリー設立が相次いでいます。
3市を中心に、広域ワイン特区全体で、ワインのクオリティを担保するしくみを導入して、《千曲川プレミアムワイン銘醸地》としての地域ブランディングに取り組むタイミングに入ったと判断しております。
今年度の「千曲川ワインバレー特区連絡協議会」総会でも、広域ワイン特区結成5年目を迎え、特区全体の情報発信や地域ブランディングについて積極的な意見が相次いだと伺っています。
現に3市連携で実現する広域観光の関係部署の部課長、各市観光協会を交えた会合も、今年5月より始まりました。
特に東御市、小諸市の両市は、昨年より「ワイン産業振興」「高地トレーニング」「DMO」の3つの連携テーマの情報交換会を、2年連続で実施しました。
3年越しの連携提案に、行政当局が問題意識を持ち始めたあかしであり、地域にとっても嬉しい動きです。
今年のトピックは、小諸市マンズワイン社小諸ワイナリーの「収穫祭」が10月26日(土)、27日(日)、同日に上田市メルシャン社椀子ワイナリーの「椀子マルシェ」が同時開催されることです。
小諸市「KOMORO WINE DAY」も10月26日(土)午後、東御市「東御ワインフェスタ」は9月7日(土)開催が決まっています。
近い将来3市連携で一泊二日の「千曲川ワインまつり」開催への夢が膨らみます。
~ 宝の持ち腐れ状態から宝の山獲得へ ~
千曲川ワインバレープロジェクトがスタートして、広域ワイン特区8市町村の首長とお会いする機会が増えました。
今までの自治体単位の観光の限界を感じつつも、実際はどこをどう変えていけば良いかがわからない。というのが実態であることも、時間の経過とともに分かってきました。
東地区の各自治体には素晴らしい歴史ある観光資源や文化が豊富にあります。
ところが本来つながりのあるものをつなげた観光でなく、わざわざ縦割り行政で分断して、細切れな小さな単位での観光に終始してきました。
例えば7月下旬から8月初旬にかけてこの地域の夏祭りや花火大会は、連日各まちで行われます。
地元住民から見れば自分のまちのお祭りですが、滞在型旅行者から観れば、大変魅力のあるイベントが続きます。
地域の将来ビジョンを明確にすることで、連携する“WHAT”を共有していく。
その“WHAT”こそ、
(1)《千曲川プレミアムワイン銘醸地》の地域ブランディング
(2)浅間連峰高地ナショナルトレーニングセンター構想の実現
(3)醸しと癒しの滞在型保養地の開発
の3つではないかと、3市長には問題提起しています。
これらが実現した暁には、60カ国700名が参加する「グローバルウエルネスサミット(以下GWS)」と連動し、世界に向けた【Wellness Destination NAGANO】への道が拓かれるでしょう。
今年の10月15日~17日の3日間シンガポール(当初の香港より開催地変更)で「GWS2019」が開催されます。
ポストサミットツアーが企画され、上田市で10月18日より3日間、GWS温泉部会の国際会議G3T(Global Thermal Think Tank)が開催されます。
歴史ある豊かな醸しと癒しの文化を持つこの地域は、今回のG3T会議をきっかけに、世界の潮流であるSpa&Wellnessへの理解を深め、地域の将来ビジョンに直結する「Wellness Tourism」に、ぜひ取り組んでいきたいものです。
そして醸しと癒しの文化に恵まれ、Wellnessのポテンシャルの高い信州を、千曲川ワインバレー部東地区はリードできると確信しています。
このように、地域連携の動きは顕著に前進し始めました。ご期待ください。
アルカンヴィーニュフォーラム
「千曲川ワイン倶楽部」
代表 小山 眞一